「エピソード by Love Song」は、私の好きなラブソングをイメージして、「記憶の中の僕」の登場人物を描いたものです。

エピソード by Love Song

No.1 真冬の恋人たち  /  No.2 雨のリゾート  /  No.3 タイムトラベル  /  No.4 眼鏡越しの空  /  No.5 SWEET LIPS

No.1 真冬の恋人たち(作詞:松本隆 作曲:大村雅朗)


私と詩織は、冬の湖までスケートに来ていた。

私は子供の頃、両親に連れられてよくこのスケート場に来ていた。
そう、それは裕也として。

裕也の両親は、いまどき珍しく二人ともスケートが好きだ。
結婚する前は、よくこのスケート場でデートをしたらしい。

最近は暖冬の影響で、この湖でスケートができる期間もすっかり短くなっている。
去年は、満足に氷が張らずに、結局オープンできなかった。
しかし、今年は冬らしい冬になったので、こうして営業している。

私は、このスケート場に来るのは好きだ。
冬の雪景色が好きなのかもしれない。

今日は冷え込んではいるものの、珍しく風もなく穏やかに晴れて、絶好のスケート日和だ。
街では見ることのできないきれいな青空の下、天然の氷の上でスケートをする爽快感は格別だ。

「うわー!すごいきれいだねー!こんなきれいな景色、初めてかもしれない。」
詩織は、湖の上に広がる雪の山並みと真っ青に澄み渡った空を眺め、白い息をはきながら喜んでいる。
「でしょ?」
ここまで詩織を連れてきた甲斐があった。


私は、両親からスケートの手ほどきを受けていたので、滑りには自信がある。
だが、美保の身体ですべるのは今日が初めてだった。
初めは恐る恐る氷に立ったが、身体がしっかり覚えていた。
すぐに氷になれて思うように滑れた。
まさに身体が覚えていた、と言えるが、私の場合は「脳」が覚えていたと言うべきだろう。

一方、詩織は今日はじめてスケート靴を履く。
初心者にいきなり湖は無茶かとも思ったが、自分もそうだったし、私が面倒を見ればどうにかなると考えていた。

私は詩織をリンクの端まで連れて行き、手を取りながらゆっくり立ち上がらせようとした。
「あーっ!!むりむりむりむり!」
詩織はすっかり腰が引けている。
「あたしが支えているから大丈夫だよ。ゆっくり立ちあがって。」
そうはいうものの、手すりも何もない湖のスケート場で、全体重を掛けてくる詩織を支えるのは結構大変だ。
「あ゛ーっ!!」
詩織は立ち上がれずに尻餅をついた。
私も一緒に転んでしまった。
「痛ったーーー・・・」
思わぬ痛さに詩織は悶絶している。
私も久しぶりに転倒の痛みを思い出した。
(男より脂肪のついている身体でも痛いものはやっぱり痛いな・・・)

「上半身の力は抜いて、ひざを曲げて」
「う、うん・・・こ、こう?」
「そうそう、じゃ、手放すよ。」
「えーーー!だめ!」
だめと言っても私は詩織から手を放した。
「あーー、ちょっと、どうすんのよ!!」
「あははは、立てた、立てた。」
詩織は、手を放されたままの格好でピクリとも動かない。
その姿が、滑稽で笑ってしまった。
「み〜ほ〜〜〜」
詩織が真顔で怒っている。
仕方ないので、私はまた詩織の手を取った。
「もう!!だめって言ったでしょ!!」
詩織は怒っているが、私の支えを得てホッとした様子だ。

詩織がどうにか立てるようになったところで、詩織には悪いが、私は少し一人で滑ることにした。
(うん、美保の身体でも大丈夫だ。)
私はストップやコーナーリングをしながら、少しずつ勘を取り戻し、気持ちよくリンクを滑った。

詩織もがんばって前進しようとしている。

私はそんな詩織に近づいた。
「詩織〜!」
そう言って、詩織の目の前でかっこよくバックターンをして、また詩織から離れた。
詩織はそんな私を見ていたが、相変わらずぎこちない動作で必死になっているようだった。
(いい気なもんね。)
きっと詩織はそう思っているだろう。

しばらく一人で滑って、ふと、詩織を見ると、若い男が詩織の近くにいるのが見えた。

「可愛いね、君。」
男は詩織に声をかけた。
「え?」
氷に集中していた詩織は男が近づいてきたことに全く気がつかなかった。
「ねえ、ひとりきりなの?」
知らない男に声をかけられて詩織は動揺した。

私は慌てて詩織の所に飛んでいった。
「詩織、行こう。」
私は詩織の右手をつかんでゆっくりとその男から離れた。
「もう、美保があたしを放っておくから・・・」
詩織は怒りながらもうれしそうだ。
「ごめん。でも、邪魔しないほうがよかった?」
「そんなわけないでしょ!」
詩織が本当にそう思っているのなら私もうれしい、そう思った。

。。。。。。。。。。。。。。。。。

私たちは、湖畔のカフェに暖まりに行くことにした。
スケート靴を肩にぶら下げて中に入ると、大きな暖炉が目に入った。
暖炉
「すごい、暖炉だ。本物かな?」
詩織は暖炉に興味を示している。
「当たり前だよ。本物の暖炉だよ。」
子供の頃に来た時と変わっていないお店に、懐かしさがこみ上げてきた。

私たちはカフェオレを注文した。

私がトイレから戻ってくると、詩織は暖炉の前で、かじかんだ手を暖めていた。
パチパチと音を立ててはねる炎のダンスをボーっと眺めている。

「可愛いね、君。」
私は詩織にそっと近づき、低い声を作って話しかけた。
「え?」
詩織が驚いて振り返った。
「ねぇ ひとりきりなの?」
私は、さっきの人の真似を続けた。

すると、詩織はニコリと笑い、
「いいえ、先約があるの、残念ね。心に決めてる人なのよ。」
と、切り替えしてきた。

私は自分を指差して、「あたしでしょ?」という顔をした。
「もう、美保のうぬぼれや!」
詩織もうれしそうに笑った。

2009/1/3 (Sat)

No.2 雨のリゾート(作詞:松本隆 作曲:杉真理)


ひどい雨だ。

今日はユウがやっと取れた有給休暇だというのに。
1か月ぶりのデートだと言うのに。

せっかくのリゾートドライブが台無しだ。

雨 ワイパーを最速にしても追いつかないほどの雨粒がフロントガラスに向かって飛んでくる。

ユウは助手席でカーステレオから流れている音楽を黙って聞いている。
後部座席には、今朝私が作ったサンドイッチが入ったバスケットと、紅茶が入ったポットが置かれていた。

相変わらず、雨が降り続いている。
二人は雨のリゾートに包まれていた。

。。。。。。。。。。。。。。。

私の白いクーペは、岬へ向かうシーサイドラインに入った。
ほどよいカーブが続く海岸沿いのワインディングロードだ。

私はふと、自分が裕也になって運転しているような感覚になった。
助手席の美保は、降り続く雨に不安な表情を浮かべている。

僕は運転のペースを上げた。

カーブのたびにタイヤが滑り、僕はカウンターをあててクルマをコントロールした。
その都度、助手席の美保は怖がって僕にしがみついてくる。

「怖がりだなあ、美保は。」
僕は、怖がる美保がいとおしい。
美保は「もうやめて」という表情をしている。

ザザーッ!
突然、対向車がはねた水溜りの水がフロントガラスにかかった。

現実に引き戻された。

助手席では、いつものようにユウがアシストグリップにしがみついて、前方の雨景色を凝視していた。
(怖がる美保といっしょだ)
私はそう思うと、また入れ替わったことへの拘りが湧き上がってきた。

(また、こんなことに拘ってしまうなんて・・・)
天気予報では晴れるはずだったのに。
私は、嫌なことを思い出してしまった雨を恨んだ。

遠くに見える岬に雨のカーテンがかかっていた。

。。。。。。。。。。。。。。。。

岬の駐車場に着きエンジンを止めると、不意に車内が雨の音だけになった。
雨の音が心に沁みる。

「今日はもう帰ろうか。」
ユウが呟いた。
恋の雲行きまで怪しくなりそうな、私の不安な気持ちが伝わったのかもしれない。

「うん。」
私たちは雨のリゾートを後にした。

2009/1/4 (Sun)

No.3 タイムトラベル (作詞:松本隆 作曲:原田真二)


洋館 高校2年になって一月ほど過ぎた。
今、僕は、なぜか町外れの古い洋館に向かっていた。
そこに向かう理由は分からないが、理由が分からないことは不思議とまったく気になっていない。

幼なじみの美保とは、この4月に久しぶりに同じクラスになった。
僕は最近、美保のことが気になって仕方がない。
おそらく、今向かっている洋館は美保の家だ。
そんな気がする。
いや、そうであるからこそ、僕はそこへ向かっているのだ。

日の暮れる頃、僕は洋館に着いた。
街中の喧騒から離れたこの辺りは、日暮れとともに、急に寂しくなった。

僕は呼び鈴を押した。

館の中に入ると、暗い廊下の向こうに美保が立っていた。
(やっぱり美保の家だ。)

美保は黙って僕のほうを見つめ、無言で手招きをしている。
僕は、手招きに誘われて美保のところへ向かった。
そして、サフラン色のドアを開け部屋に入った。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。

一面の砂漠だ。
巨大なスフィンクスが眠っている。

いた。
美保だ。
スフィンクスの傍らで砂の上に立っている。
下弦の月が美保を照らしている。
よく見るとクレオパトラのような衣装をまとっている。

ふいに美保が空を指差した。
その方向を見ると、北極星が輝いている。
北極星の真下にはピラミッドが尖って光っていた。
ちょうど、ピラミッドから北極星に向けて光の船が飛び立つところだ。

心洗われる荘厳な世界に僕は引き込まれた。

「時間旅行のツアーはいかが、いかがなもの?」
いつの間にか僕のそばにいた美保が、僕にそう囁いた。

。。。。。。。。。。。。。。

ここはニューヨーク。
すれ違いざまに黒いクラシックカーからマシンガンが発射される。

すると古いラジオからチャールストンのピアノが流れてきた。
曲に合わせてFBIもタップダンスを踊りだす。

ニューヨークはすっかりお祭騒ぎだ。
僕の気持ちも高まり、一緒に踊りたくなった。

「時間旅行のツアーはいかが、いかがなもの?」
今度はハリウッドクイーン紛いの装いをした美保の甘い吐息を感じた。

。。。。。。。。。。。。。。

いよいよ最後の部屋だ。
ここは、星が降りそそぐ時の果て。

とうとう住めなくなった地球から幾千万の船が旅立っている。
僕も船に乗り込んで窓の外を眺めた。

すると、地上に僕が立っているのが見えた。
(えっ!?どうして?)
僕は驚いた。
だが、船はそのまま離れていった。

船はどんどん地上から遠ざかり、そして青い地球が窓にあらわれた。
その青さは古代と全く変わらない。
もう住めないのがウソのようだ。
地球は徐々に小さくなり、やがて点となって闇に消えた。

(さっき見えたのは何だったのだろう。)
僕は、ふと窓に映りこんだ自分の姿を見て驚いた。

そこには、美保が映っていた。

。。。。。。。。。。。。。。

そこで突然、夢が途切れた。

いつもの僕の部屋だ。
「夢か・・・。」

夢の中で、僕は美保に導かれて不思議な世界を見た。
その世界の果てで最後見た景色が忘れられない。
船の窓に映った美保の少し驚いた表情が脳裏に焼きついている。

あれはいったい何だったのだろうか?
僕と美保のこれからを暗示しているのだろうか?


2009/1/18 (Sun)

No.4 眼鏡越しの空 (作詞・作曲:吉田美和)


眼鏡 詩織は目が悪い。
中学から高1の今日まで、ずっと眼鏡をしている。

詩織は眼鏡が大嫌いだ。
だから、ずっと眼鏡をやめたいと思っていた。

そして、ついに先週、詩織はコンタクトレンズを買った。
でも、いざ眼鏡を外そうとすると、なかなか決心がつかない。
(みんなどう思うだろう・・・)
そう考えると、眼鏡を外した自分の姿がとても不安になり、結局ずっと眼鏡をかけたままだ。
詩織にとって眼鏡は、自分の気持ちを隠すのにも都合がいいし、第一ちゃんと見えるのでなかなか手放せない。

美保とは高校に入って知り合った。
同じクラスで同じ卓球部だったので自然と仲良くなった。

ゆうべ詩織は美保の夢を見た。
美保はいつものように颯爽としていた。
ただ眼鏡を外すことに、こんなに臆病になっている自分とは好対照だ。

朝起きて少し泣けた。
冴えない自分のことを思って少し泣けた。

美保の短い髪、シャンとした後姿を思い出す。
「あなたのようになりたい」
美保に憧れている自分がいる。

詩織は昨日、図書館で「空の写真集」を借りていた。
香川美保
カードには、強くてきれいな美保の名前が書かれていた。

そんなことがあったから、美保の夢を見たのだろうか。

。。。。。。。。。。。。。。

本当は、詩織は眼鏡が嫌いなのではない。
泣き虫で臆病な、そんな自分が嫌いなのだ。
いくらガラスの奥で叫んでいても、誰も気づいてくれない。

(変わらなくちゃ)
いつも防御壁の役をやってくれている眼鏡に感謝しながら詩織はそう思った。

やってみるね。
私をきちんと見せてくれていたレンズには、もう頼らない。

美保の短い髪、シャンとした後姿をまた思い出した。
「あなたのようになりたい」
思い出すたび美保への憧れが募る。

目の前の机には、「空の写真集」が置かれたままになっている。
背表紙の三日月だけが、そんな詩織を知っている。

「あなたのようになれたら・・・」と憧れる。
その想いが力をくれる。

もう、迷わない。
「私は変わる。」
詩織はそう呟いた。


2009/1/20 (Teu)

No.5 SWEET LIPS(作詞:来生えつこ 作曲:山本達彦)


詩織は本当に可愛い。

小柄で目がクリクリしているルックスが可愛いのはもちろん、その純粋で素直な性格が詩織の可愛さを一層引き立てている。

大学1年の夏休み。
高校までとは違う大学の長い夏休みを、9月になった今も私と詩織は楽しんでいた。

ここは、香川家がよく利用する避暑地のペンション。
今日は、詩織と二人で泊まりに来ていた。
9月になるとお客さんは少ないので、料金も少し安くなる。
近くのテニスコートも貸し切り状態なので、この時期に利用できるのは大学生のならではだ。
また、ここのオーナーと父は知り合いなので、父も安心して私を泊まりに行かせてくれる。

今日は早めに夕食をとり、ナイターでテニスを楽しむことにした。
高原の夜風が心地いい。
空には星が輝いている。
カクテルライトに照らされてコートも輝いている。

こんな素晴らしいロケーションにもかかわらず、二人ともテニスは我流なのでマトモなゲームにはならない。
しかし、下手は下手同士、それなりに楽しめる。
私が打つ下手なリターンにも、詩織は必死になってボールを追いかける。

そんな、素直で何事にも真面目な詩織を見ていると、私はちょっとからかってみたくなる。

「詩織、このコート、時々伊達公子が練習に来るんだよ。」
私たちは、コート脇のベンチに座り、スポーツタオルで汗を拭きながら一休みしていた。
「うそ!?」
詩織は驚いて、汗を拭く手が止まった。
「ほら、やっていて気がついたと思うけど、これただのハードコートじゃないよ。少しクッションがあるでしょ。身体への負担が少ないんだよ。それに透水性のある素材を使ってるから、少しくらいの雨でも大丈夫だし、水はけも抜群にいいんだよ。」
「ふ〜ん、すごいね。」
詩織は、いつものように目をくりくりさせて素直に話を聞いている。
「ナイターの設備なんてめったにないでしょ。」
「そういえば、そうだよね。言われて見れば、あたしたちにはもったいないね。」
「ホントはね、ここナイターで借りるの1時間3,000円かかるんだ。だから、今日2時間で6,000円。」
「えっ?そんなに?」
「でも、大丈夫だよ。あたしが払っておいたから。」
「ええ〜。悪いよ〜。半分払うよぉ。」
詩織はテンションが一気に下がってしまったようだ。
「そお?じゃあ、3,000円。」
私が遠慮なく詩織の言葉に甘えると、詩織はバッグの中の財布を探し始めた。

「ウソだよ。」
そう言って、私は詩織の動作を制止した。
「えっ?」
詩織はキョトンとしている。
「お金なんか掛からないよ。ペンションの宿泊者は予約すれば使えるの。」
「はあ?」
「まったく、素直だなあ、詩織は。」
「ひど〜い、美保、騙したのね〜。」
「ははは、ごめん、ごめん。」
「もう!!どこまでがホントなのよ!!」
「全部ウソ。伊達公子がこんなとこに来っこないでしょ。」
「こらーっ!!」
「ははは、詩織、可愛いね。」
「フン!」
詩織はすねた顔で横を向いてしまった。

今日の詩織は、前面に椰子の木が描かれたTシャツを着ている。
詩織がこんな大胆な柄のものを身につけるのは珍しい。
日常から離れた開放的な雰囲気がそうさせているのかもしれない。

詩織が横を向くと、椰子の木の模様が胸元で膨らんで、私より大きい胸が強調される。
そんな詩織の女性らしい柔らかい身体を想像すると、私は少しドキッとしてしまう。

「ごめん、ごめん、飲む?」
私は胸の高鳴りを悟られないように、用意しておいた缶ビールを詩織に差し出した。
「フン。飲むわよ。」
詩織はスネたまま、受け取った缶ビールを開けた。
すると、意外にも軽く飲み干してしまった。

「はーっ!おいしいっ!」
「ええ?詩織、大丈夫?」
「平気よ。」
詩織はケロッとしている。

詩織の唇がしっとりと濡れて赤みが増した。
(キスしたい・・・)
私はまた胸がドキッとしてしまった。

「なんか、こうしてリゾートしていると、大学生ーって感じだよね。」
詩織の機嫌が戻ってきた。
「そうだね。でも私たちだけでビール飲んだりしてるみたいで、ちょっと罪悪感。」
「なに言ってるのよ。大学生の特権よ、特権。」
「そうだよね。でも『お酒は20歳になってから』て書いてあるよ。」
「もう、美保ったら、雰囲気悪いよ。大学生はみんな20歳だよ。っていうか、ビール持ってきたの美保でしょ!!」
「かたじけない。」
「なによ、それ!」
「ははは。」

Sweet Night
何気ない詩織とのやりとりが本当に楽しい。
詩織を見ていると天使がはしゃいでいるようだ。
Sweet Lips
詩織のくだけた笑顔が、くちばしの青い小鳥のように思える。

「あ、そうそう、隣のテニスコート、昔グリコのCMに使われたことがあるんだって。マッチと松田聖子のやつ。」
「マッチ?」
「そう、マッチ。近藤真彦・・・。あれ?待てよ、郷ひろみだったかな?」
「もう、どうせウソでしょ。」
「ウソじゃないよ。」
「どうでもいいよ、そんな昔の話。興味ないもん。」
もう今日は何を言っても、詩織には信じてもらえそうにない。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


「それにしても、星が良く見えるね。」
私たちはペンションに戻り、心地よい夜風に当たりながら、窓から星を眺めていた。

「今日は夏の大三角がよく見えるよ。」
「え?どれ?」
詩織が興味を持って私に尋ねた。
「あの一番明るく光っているのがベガ。」
「うん。」
「で、ベガの左側に天の川が見えるでしょ。その左下に見えるのがアルタイル。」
「ホントだ。天の川がよく分かる。すごいね。」
詩織は、いつものように瞳をクルクル動かして輝かせている。
「そして、2つの星の上の方で天の川の真ん中にある一番明るいやつがデネブ。これが夏の大三角。」
「へ〜、なるほどね〜。」
真剣に小首をかしげて聞いている詩織の仕草が可愛い。

「ベガは織姫だから詩織かな。で、彦星のアルタイルがあたし。」
「え?どうして?あたしたちいつでも会えるんだから違うでしょ。」
詩織は明るく否定した。
「そっか。」
でも、私たちには天の川という越えられない壁があることは、二人とも分かっている。


「詩織は魚座だよね。」
「うん。」
「あたしは蟹座。魚座と蟹座は相性がいいんだよ。」
石川裕也も香川美保も同じ蟹座だ。
私はどちらにしろ蟹座なのだ。
そのことは詩織も知っている。
詩織はどちらとの相性を考えたのだろうか?

Sweet Night
恋も星巡りも成り行き次第。
Sweet Lips
だから、今夜は詩織の唇をさらって、小鳥を抱くように眠りたい。


2009/2/24 (Sun)

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