■ 記憶の中の僕 Season 2 ■
第1話 再甦の兆し
第2話 カミングアウト
第3話 嫉妬
第4話 革命のカリスマ

掲示板

記憶の中の僕 Season 2

第4話 革命のカリスマ


(まったく、何自惚れたことを言ってるんだ!)
男子トイレに消えていった耕介の残像に向かって、もう一度繰り返した。

(しかも、元女のくせに当たり前のように男子トイレで立ちションしやがって!)
耕介に対する怒りと嫉妬心がとりとめもなく湧き上がってくる。
思わず左手を股間にやった。
だが、期待していたものが生えているわけもない。
いつもと変わらない感覚に落胆した。
(なんで・・・)
私は左手に力を入れ、スカートの生地ごと股間をギュッとつかんだ。
(くうっ・・・)
ゾクッとする感覚に、自分で自分を慰めたくなる気持ちが膨らんできたが、それをぐっと抑え、慌てて股間から手を離した。
そして、両手でスカートを払って形を整え、軽く深呼吸をした。
「ふう〜」
(落ち着け・・・)

耕介が用を済ませてトイレから出てくるのを待ち構えていてもいいのだが、そんなことをしたら耕介にまた不愉快なことを言われそうだ。

その時、綾香もトイレにやってきた。
「あれ?耕介来たでしょ?」
「『耕介』なんて、随分親しいんじゃない?」
「おや?どうしたの?ムキになって。ちょっと言ってみただけでしょ。」
「もう!でも香取さんならトイレ入ったみたいだけど。」
「そう。で、メアドどうする?」
「メアド?」
「交換する?」
「ああ、そういうこと。あたしは別に構わないけど・・・。」
「そう、じゃ、一応みんなOKってことだね。それから、今日はこれでお開きにするけどいい?」
「うん。あたしはいいけど、奈々ちゃんいいのかな?」
綾香の意外とあっさりとした計画にちょっと拍子抜けしたが、このまま3:3で次に行っても、耕介とは合コンごっこを続けるしかない。
私は耕介とは入れ替わりの話がしたいのだ。
「奈々子も了解だよ。」
そういって綾香はトイレに入っていった。

待てよ。
もしかしたら、綾香は私たちをまいて耕介と二人きりになろうとしているのではないか。
いや、そんなことはないはずだ。
耕介は私以外の女を好きになったことがないと言っていた。
その耕介が他の女と二人だけになるはずがない。
でも、さっきまでの耕介の楽しそうな表情を思い出すと、強ち的外れではないのかもしれない。
(まさか・・・)

考えてみれば、耕介と綾香はお似合いではないか。
芸能人のような美男美女だ。
なんだか私が入り込む余地はなさそうな気がしてくる。

そうこうしているうちに耕介がトイレから出てきてしまった。
(もう出てきた!早いな〜)
「あれ?美保、まだいたんだ?俺が出てくんの待ってた?」
(くっ、やっぱり言うと思った。)
「待ってません!綾につかまってたんだよ。」
「え?綾香さんトイレ行っちゃったん?」
耕介は残念そうだ。
「残念だったね。綾が出てくるまで待ってれば。」
私はそう言って、耕介に背中を向けた。
「おい!ちょっと待てよ!」
(ふん!)
耕介の呼び止める声を無視して、そのまま席に向かった。

(あ〜あ〜、何やってるんだろ。)
私は自分の席に戻って、今の自分の行動を振り返って後悔した。
(典型的なヤキモチ焼きだ・・・)
自己嫌悪に陥った。

(耕介、遅いなあ・・・)
耕介はなかなか戻ってこない。
(ホントに綾を待ってるのか・・)

私の苛立ちがいよいよ高まったころ、耕介と綾香が並んで談笑しながら戻ってきた。
(やっぱり待ってやがった)
ダークスーツをおしゃれに着こなした長身の耕介に、華やかなミニのワンピースを纏ったモデルスタイルの綾香が寄り添うようにして立っている。
店中の視線を集めてしまうほどの存在感だ。
(カッコイイ・・・)
よく知っている二人なのだが、相乗効果でいつも以上に輝いて見える。

耕介はさりげなく綾香をエスコートしながら席に着いた。
二人とも見た目だけでなく、そのひとつひとつの動作までがおしゃれに見えてくる。

耕介への嫉妬。
綾香への嫉妬。
自分でも自分の気持ちが分からない。
私はお腹の中にモヤモヤ抱えたまま二人を横目で見ていた。

。。。。。。。。。

合コンは綾香の計画通り1次会で終了し私たちは男性陣と別れた。

「綾香先輩、香取さんカッコイイですねえ。」
奈々子が綾香に声をかけた。
「う〜ん。まあまあだね。」
綾香はいつもの女王様に戻っている。
「ええ〜?あれ以上何を求めるんですか?」
「やっぱり収入がね。付き合うだけならいいけど。」
「奈々子が気に入ったらのなら付き合ってみれば?」
「ええ〜?あたしじゃムリです。」
「そんなことないわよ。他の男で妥協したりとか、自分を安売りしちゃダメだよ。」
「でも・・・」

「美保はこれからも仕事で耕介とは会うんでしょ?」
綾香が私に話を振った。
(そうだった・・・。)
「そうだよ、綾。TSコンサルタントは利害関係者だって言ったのに。結局ご馳走にもなっちゃってマズイよ。」
「向こうが出すって言うんだから仕方ないでしょ。」
「それがマズイっての。」
「ね、美保固いでしょ。奈々子は見習っちゃダメだよ。」
「何言ってるの。公務員の基本でしょ。」
「奈々子は気にすることないよ。仕事上の関係はないんだから。耕介にアタックしても大丈夫だよ。」
「でも、香取さんは綾香先輩といい雰囲気でしたから・・・」
「そうだよ。綾香だってまんざらでもなさそうだったよ。」
「でも彼、もう少し何かが足らないんだよね。押しの強さというか、男っぽさというか。」
(綾のやつ、どんだけ上から目線なんだ・・・)
その綾香の女王様らしい発言に呆れたが、一方でその本質を突いた指摘にはちょっと驚いた。

私たちはメールを交換したが、耕介は誰かに誘いのメールを送ってくるだろうか。
ないと信じたいところだが、今日の耕介の表情を思い出すと、綾香には送ってくるような気もしてくる。
だが、奈々子を誘うことはないだろう。

「香取さんってちょっと遊び人っぽいよね。」
私は奈々子が変に期待しないようにそれとなくマイナス発言をした。
「え?そう?」
綾香は少し意外そうな表情をして私のほうを見た。
「だってなんだか合コン慣れしてたし、だいいち女の扱いもうまい感じだったよ。」
「そういえばそうですね。」
奈々子が私の意見に同意した。
「あれ〜?もしかして、美保、本当は耕介狙ってるんじゃないの?そういえば、あんた耕介のことよく見てたわよねえ。」
(ドキッ!!)
「冗談はよして!利害関係者だって言ってるでしょ!」
「恋愛は理屈じゃないよ〜。」
綾香は意味深ににやけてる。
「分かった風なこと言わないで!」
私は綾香の発言を強く否定したが、否定すればするほど自分では意識していなかった反対の感情が隠し切れなくなっていた。
(余計なこと言うんじゃなかった。)
とんだやぶへびになってしまった。


。。。。。。。。。。。。。。。。
。。。。。。。。。。。。。。。。

美保の家は裕福だ。
父は小さいながらも会社を経営している。
美保はいわゆる社長令嬢にあたるが、家に使用人がいたりプールがあったりするわけではない
母は専業主婦で日常的に家事をこなしているし、父が家に仕事を持ち込むことはほとんどなかった。
だから私は、この家にいる限り自分が社長令嬢であることを意識することはなかったし、そもそも社長令嬢と呼ばれるほど大きな会社でもない。

とはいいながらも、この町の比較的閑静な住宅街の一際大きな区画に建っているこの家の主が普通のサラリーマンではないことは、高い塀に囲まれた屋敷や立派な駐車場に置かれている高級外車を見れば誰の目にも明らかだ。

創業者である祖父は、同じ住宅街の近くの区画に祖母と二人で住んでいる。
祖父はユウのことを高く買っていた。
いや、祖父だけではない。
父も母もユウを評価していたし、弟の真(しん)もユウには一目置いていた。
だから、私がユウとつき合うことには誰も反対しなかったし、将来ユウがうちの会社の力になってくれれば、と祖父も父も期待していただろう。

そんなユウは元々美保だったのにもかかわらず、美保としては才能を持ちながらも香川家では期待される立場になかった。
封建的な祖父の影響下では美保の希望と現実には大きな隔たりがあったに違いない。

私は、あの高校2年の夏祭り以降8年間この家で美保として過ごし、そんな美保の立場を実感しながらも、一方ではその立場に甘えてきた。
私にとっては、この期待されない美保の立場は意外と居心地がよかった。
この環境は私の性格に合っていたようだ。
そしていつしか元の自分の姿をしたユウを愛するようになった。

香川家が私に求めることの一番は、香川家に有用な男を見つけることだ。
その点においてユウは申し分なかった。
だから、ユウと付き合っている限り、私は香川家の求める美保であったため、祖父からとやかく言われることはなかった。

だが、ユウは死んでしまった。
もうユウと結婚することはできない。

ユウが死んでからまだそれほど時が経っていないので、祖父や両親から私の結婚相手についての話題を耳にすることはなかったが、私もいつ結婚しても不思議ではない年齢に達しているので、祖父にはきっとなんらかの考えがあるに違いない。
ひょっとしたら既に具体的な候補が挙げられているかもしれない。

私がこうして公務員として働いていられたのも、大して家の事することもなく自由でいられたのも、私がユウと付き合っていたからかもしれない。
将来有望なユウと結婚するだろうという期待があったから、祖父も父も何も言わなかったに違いない。
もしかしたら、これからは祖父や父が認めた男に見初められるように、花嫁修業をさせられるかもしれない。
そのためには今の仕事をやめさせられても不思議はない。

今こうして、自分の置かれた状況を改めて考えてみると、私は美保として香川家に馴染んでから初めての大きな憂鬱を感じる。
私が香川家の人間である限り、自分が望まない結婚をさせられてしまうのではないか。
ユウがいなくなってしまった今、他の男と結婚することなど私には想像できない。

仮に私が耕介とつき合うとしたらどうだろう。
耕介は香川家に受け入れられるだろうか。
おそらく祖父は認めてくれないだろう。

祖父は学歴にこだわるほうではない。
その人物を能力・実力で評価するはずだ。
といいながらも、父は一流大学を出身し一流企業で働いていたし、ユウにいたっては東大出身のキャリア官僚である。
結果として、香川家に認められる男にはある程度の経歴が必要となるだろう。

耕介は私と同じ地方の二流大学に2浪して入学し、今は小さなコンサルタント会社に勤めている。
この経歴ではとても香川家に認められるとは思えない。

私自身は市役所で働いている地味な女である。
今まで人一倍努力をしてきたわけでもなく、夢や目標を持って生きているわけでもない。
なんとなく周囲に甘えて流されて生きてきた。
香川家の看板がなければ私にはこれといった取り得がない。
一方、耕介は背も高く見た目がいい上、社交的で気遣いもできるので、昔から女の子には人気があった。
入れ替わりのことがなければ、こんな私には耕介はもったいないくらいだ。

。。。。。。。。。。。。
。。。。。。。。。。。。

合コンの次の日、いつものように仕事をしていると、メールの着信を知らせるバイブ音がした。
私は一旦仕事の手を止め、ケータイを確認した。

耕介からだ。
(なんだろう?)
昨日までの耕介の行動にさんざんイライラさせられていたにもかかわらず、ついに耕介から連絡が来たことに私の胸は躍った。

『香川美保様、香取耕介です。昨日はありがとうございました。とても楽しかったです。もしよろしければ僕とお付き合いしていただけませんか?』

(え?なにこれ?ふざけてるのか!?)
そう思いながらも、このメールの内容にときめいている。

『こちらこそありがとうございました。&ご馳走様でした。でも、ごめんなさい。お付き合いはできません。』
こう打って『送信』ボタンを押そうとしてたが、そこでもう一度考えを巡らせた。
(万が一このメールを真に受けてまた連絡が途絶えてしまうのはイヤだ・・・)
今まで男の耕介に対しては強気一辺倒の対応をしてきたが、なぜか今は慎重になってしまっている。

『こちらこそありがとうございました。&ご馳走様でした。お友達でよければ。』
私はメールを弱気な内容に打ち直して送信した。

すぐに返信が来た。
『では明日会えませんか?』

私たちは明日の祝日に会う約束をした。

耕介のカミングアウト以降、私の心の中を占領していたモヤモヤはすっかり吹き飛んでいた。
自分でもびっくりするほど気持ちが軽くなった。
(簡単な女だ・・・)
そう自分を蔑みながらも、つい口元が緩んでしまいそうになる。
(どうしてこんなに嬉しいのだろう・・)


(このことは一応綾に報告したほうがいいかな・・・。)
いずれまた、綾香からこの話題を振られることは間違いない。
少し面倒だが、本当のことを話すことにした。

「うそーっ!?耕介と知りあいだったの?」
「うん。」
「なんだー、すっかり余計なことしちゃったなあ〜。」
「ごめん。」
「でも、そういうことならしょうがないわね。奈々子にはあたしから言っておくけどいい?」
「うん、お願い。」
綾香は笑って了解してくれた。

私は、明日が来るのが待ち遠しく思いながら、仕事を片付けていった。
仕事は意外にはかどった。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


明日がクリスマスイブというこの日、私の気持ちを表しているかのように快晴となった。

(いた!耕介だ。)
待ち合わせの駅前のロータリーの歩道に、黒いダウンジャケットにジーンズ姿の耕介を見つけた。
私は耕介の目の前に私の白いクーペを停めた。

「まだ、このクルマ乗ってたんだ。」
クルマの助手席に乗り込んできた耕介が話しかけた。
今日の私は白いセーターにジーンズだ。
嬉しい気持ちを悟られないようにできるだけ普段着っぽい格好にした。
実は後部座席に黒のダウンジャケットが置いてあるので、服装が耕介とすっかりかぶっていた。

今日はとりあえず私がクルマで耕介を駅まで迎えに行く約束にしていたのだ。
目的地は特に決めていない。
耕介は私のクルマの助手席に乗ったことのある数少ない男である。

「全然調子いいからね。このクルマを手放す理由がないよ。」
私はこのクルマを本当に気に入っている。
ディーラーの整備のお兄さんもこのクルマの面倒をよく見てくれる。
女の私がこのクルマのメカニズムに興味を持っていることがよほど珍しいらしく、親身になって教えてくれる。
このクルマを取り巻く環境が良好なうちは、ずっと乗り続けるつもりだ。

耕介は助手席で大きい身体をモゾモゾさせながらダウンジャケット脱ぎ、後部座席に放り投げた。
耕介も白いセーターを着ていた。
(うわ・・・セーターまで同じだ・・・)

「それより、なんで耕介が合コンしてるのよ。元女って言うのは嘘?」
「はあ?そりゃこっちのセリフだよ。美保こそなんでだよ。業者と会っちゃマズイってあんなに言ってたくせに。」
「あれは、綾に強引に誘われたから仕方なかったんだよ。それに相手が耕介のところなんて知らなかったから・・・」
「だろ?俺だって同じだよ。あの合コンは綾香さんがうまいこと仕組んだんだよ。」
「それにしては、随分綾と仲良さそうだったんじゃない?耕介もまんざらでもなさそうだったよ。」
「合コンだぜ?仲良くするのは当たり前だろ?お前こそ随分すましてて他人行儀だったぜ。」
「ええ?そんなことないよ。」
(他人行儀は耕介のほうだろ・・)
「でももし俺が歩美のままだったら、綾香さんは絶対に友達にはなってないタイプだよ。」
「え?どうして?」
「あんなふうに積極的にどんどん行けるのは、やっぱり自分に自信があるからだよな。あんなに綺麗で男にチヤホヤされてる女は虫が好かなかったろうね。」
「確かに綾は美人だしモテるけど、悪い子じゃないよ。」
「そうだな、こうして美保とデートできるのも綾香さんのお陰だしな。」
「う〜ん。まあそういうことになるね。」
耕介の言うとおり、こうして耕介と二人で話ができるのだから、今さら合コンの経緯を追及しても仕方がない。

「それにしても、スーツなんか着てるから最初は美保とはわかんなかったよ。一人だけ面接に来たのかと思ったぜ。だあっはっは〜。」
耕介は思い出して笑った。
「ええ〜?」
「それに、綾香さんに比べたら、お前学生みたいだよな。全然同い年には見えないよ。」
「ひどい!」
「でもそこが可愛いんだよ。」
「なっ・・」
突然の褒め言葉に動揺した。
元女の耕介にこんなことを言われたら、男のプライドが許さないところだが、今はなぜかその言葉への嬉しさの方が勝っている。
(くそ・・・こんなこと言われて喜んでしまうなんて・・・)


「ところでさ、美保。なんで今日OKしてくれたん?」
「え?だって、耕介が誘ってきたんじゃない。」
「そんなのいつものことじゃねえか。あんなに業者業者って俺のこと言ってたのに、随分あっさりOKしたなって思って。」
「そりゃそうだけど・・・だって、耕介は入れ替わりのこともっと知りたくないの?」
「もちろん知りたいさ。美保のこともっともっと知りたいよ。」
「じゃ、何で連絡くれなかったのよ。」
「だって、お前のこの間の様子じゃ、あんまりこの話しないほうがいいのかなって思ってたよ。」
「そう・・・。」
耕介は耕介なりに私に気を遣っていたのだろうか。

「ねえ、これからどこ行く?」
私は、クルマを駅から離れる方向に目的もなく走らせていた。
「そうだなあ、もしよかったら俺のアパート来ない?」
「ええっ?何する気?」
「そんなに警戒すんなよ。美保もすっかり女の子だな。」
(また女扱いしやがって・・・)
今度は少しカチンときた。
「そんな言い方やめろよ。」
わざと男言葉を使ってみたが、自分でもぎこちない。
「無理すんなって。お前も分かってるとは思うけど、結局は自分の意識を身体に合わせるのが一番自然なんだよ。」
「そうかもしれないけど、でも・・・」
「そんなことより、入れ替わりのこと知りたいんだったら、お前に見せたいものがあるんだ。」
「見せたいもの?」
「うん、歩美になった耕介と俺で調べた入れ替わりに関するレポート。」
(なんだって!?)
それならぜひ見たい。
耕介のアパートに行くのはリスクがあるが、耕介が元女なら変なことはしないだろう。
私は自分にそう言い聞かせたが、一方で何かが起こることを少し期待している自分もいた。

耕介のアパートは大学のときとは違い、今は会社のある県庁所在地にあるという。

「ちょっと遠いかな?」
「ううん。平気。」
ここからはクルマだと1時間くらいかかりそうだが、私にとっては苦になるほどの距離ではない。
私はクルマの目的地を耕介のアパートに定めた。

アパートへ向かうクルマの中で、私たちは入れ替わりについてお互いにもう一度話をした。
今日は耕介がユウのことを悪く言うことはなかった。
私に気を遣っていた。

そして、耕介は自分の入れ替わりことをこう話した。

・・・・・・・・・・

俺と歩美、すなわち歩美になった耕介は、入れ替わった後何度も元に戻るための試みを行ったんだ。
あの場所に戻ってキスをしたことはもちろん、入れ替わったときのお互いの行動を逐一思い出して再現したり、場所を変え、時間を変え、あらゆる条件で実験を行ったが、ついに元に戻ることはなかった。
夏休み中の一月くらい実験を続けても全く成果がなかったので、入れ替わり後の歩美は大きく落胆し、体重も10kg近く落ちて、入れ替わる前とは別人のようになってしまった。
夏休みが終わる頃、歩美が大学に戻らなければならなくなった頃は、俺はもう戻ることはあきらめていたんだ。
だから、歩美がうまく大学に馴染めるように一緒に大学に行ったりしてアドバイスしたんだけど、結局歩美は馴染めずに大学を辞めてしまった。
そして、1年後に同じ場所での実験が失敗に終わった後、歩美は突然いなくなってそれっきり未だに戻ってこないんだ。

もし、俺たちの入れ替わりのことを信じてくれる人がいれば、歩美もあんなふうにはならなかったと思うんだけど、両親でさえ信じてくれなかったからね。
入れ替わっていることを証明するものが何もないんだよ。
俺たちは生まれてからずう〜っと一緒だったからなおさらだったかもしれない。
それが一番辛かったかな。

入れ替わる前の耕介は理数系の大学を目指していた。
でも俺は元々文系なんだよ。
歩美として入った大学は文学部だったし。
俺は元の耕介がいつ戻ってきてもいいように無理して理系を目指した。
そして二浪して美保と同じ学部に入ったってわけ。
あとは美保の知っているとおり。

・・・・・・・・・・・・

「そうだったんだ・・・。耕介もがんばってたんだね。それにしても歩美さん心配だね。今どうしてるんだろう。」
「歩美は最後まで自分の身体にも馴染めなかった。無理して男のままでいようとしたんだ。だから心に相当の歪を抱えていたんだと思う。」
「歩美さんの気持ちはよく分かるよ。ユウが生きているときはそれほどでもなかったけど、ユウが死んで入れ替わりを再認識してからは特に・・・。」
「そうか。そういう意味じゃ、ユウのやり方は間違ってなかったんかもしれないな。この前は勝手なこと言ってゴメンな。」
「ううん。」

運転しながら聞くには少し重い話だったが、耕介が私と同じ境遇であることは理解できた。
と同時に私にとって耕介が友達以上の存在であるこということも感じた。

「美保が入れ替わりだと分かって俺は確信したんだ。俺が美保に惹かれたのは偶然じゃない。」
「どういうこと?」
「ええ〜?分かんないのかよ。俺達は心も身体も異性だってことだよ。」
「ああ、そういえば・・・。」
「だから、学生のときお前に一目ぼれしたのは自然だったんだよ。俺の本能はお前の本質を見抜いていたんだ。」
「すごいね。でも、あの頃あたしは耕介に何も感じなかった・・・。」
「まったくだよ。俺があんだけ告ってもまったくなびかなかったからなあ。いかにお前が鈍感かって事だよな。」
「はあ?なによ、その言い方は。」
でも、確かに耕介の言うとおりかもしれない。
私は入れ替わりを否定されていたものの、普通の男に恋愛感情を持つことはなかった。
だから入れ替わりの耕介には特別な感情を持っても良さそうなものだが、他の男と何も違いを感じなかった。
詩織との関係があったからだろうか。
耕介が入れ替わりであることが分かった今、急速に耕介に惹かれていることは否定できない。

。。。。。。。。

耕介のアパートは駅のすぐ近くの1等地にあった。
しかし、そのアパートにはクルマを停める場所がなかったので、私たちは近くのコインパーキングにクルマを停め、アパートまでの少しの距離を歩いた。
二人とも黒のダウンジャケットにブルージーンズを履いている。
「あれ?おんなじカッコだ!気が合うな〜。」
(何を今更・・・)
私は耕介の陽気な発言を無視したが、悪い気はしなかった。
耕介と並んで歩くと、耕介の背の高さが改めてよく分かる。
私が履いているドライビングシューズはかかとがペタンコなのでなおさらだ。
(やっぱり、耕介カッコイイかも・・・。)
耕介と並んで歩くことが少し嬉しかった。
ダウンジャケットのポケットに手を突っ込んで歩いている耕介の腕に、つい手をかけそうになったが、耕介が元女だということが頭を過ぎり思い止まった。

アパートが見えてきた。
ずいぶん古そうな洋風の建物だ。
木造瓦葺の2階建てで、至るところに大谷石が施されている。
「すごいとこに住んでるね。とてもアパートには見えないよ。」
「第二次大戦前の建物らしいよ。有名企業の男子寮として建てられたらしいけど、今は地元のいくつかの会社が共同で所有している。」

私は耕介に案内されて、大きな庇のついたエントランスからロビーに入った。
外の天気は快晴だが、ロビーは薄暗く寒々としている。
黒い板張りのフロアの奥に階段があり、左右方向に廊下が続いている。
「静かだね。」
建物の中に入ると外の喧騒がほとんど聞こえてこない。

私たちは階段を使って2階へ上がった。
重厚な階段は踏み板を踏むたびにきしんだ。
耕介の部屋は奥から2つ目の部屋だ。

「こんな鍵だぜ。スゲー古そうだろ。」
耕介はそう言ってポケットからアンティークな鍵を取り出した。
鍵を開け、これまたアンティークな真鍮のドアノブを回した。

部屋は12畳くらいありそうな洋室だ。
意外と広い。
この部屋には不釣合いな小さなコタツが置かれている。
部屋の隅にはダンベルや筋トレマシンのような道具が転がっていた。
キッチン、バス、トイレもついている。。
納戸のような小部屋もあるようだ。
部屋の中はキチンと掃除されており清潔な印象だ。
ベッドの布団も整えられている。

耕介は本棚の引き出しからA4の紙がとじられている紙の束を取り出した。
「レポートはこれだよ。まあ、レポートって言っても俺達が調べたことをまとめたメモだけどね。」
ワープロで印刷されたものだ。

私はコタツに座りレポートに目を落とした。
耕介は私の向かい側に座った。

1枚目の紙には1行目に「斉藤道三の野望」と書かれている。
「さいとうどうざん?」
「『どう「さ」ん』だよ。濁らない。」
「そんなことどうでもいいよ。それよりなにこれ。入れ替わりと関係ないじゃない。」
「関係あるよ。それが入れ替わりのレポート。」
「はあ?」
「よく見ろよ。」

 −入れ替わりの相手−
  織田信長=濃姫
  徳川家康=濃姫の妹

「なにこれ?」
「俺たちいろいろ調べてる中で歴史上の人物の中に入れ替わりがいるんじゃないかって考えたんだ。」
「それが、信長と家康ってこと?」
「そう。だけど、その二人だけじゃないぜ。そのレポートには他に何人も書いてあるから見てみなよ。」
「そんなに何人もいるの!?」
「いるよ。みんな仮説だけどね。ははは。」
「はははって、ネタ?せっかくはるばるやって来たのに・・・。」
「あ、ごめんごめん。もちろんネタじゃないよ。大真面目なレポートさ。それである結論を導き出したんだ。」
「結論?」
「そう。その結論とは、」

「とは?」

「『革命は入れ替わりが成し遂げる』」

「ん?革命?」

「あれ?カッコよくない?」
タメを入れて結論を言ったにもかかわらず、私の反応がよろしくないので耕介は拍子抜けしている。
「カッコイイも何も飛躍しすぎていてよくわかんないよ。まあ、ちょっと読んでみるけど・・・。」

『斉藤道三の野望』についての記述は次のようなものだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
戦国時代の革命家といえば織田信長ということになるだろう。
自らを第六天魔王と称し神仏を超越した存在として、日本を、いや世界を変えようとした人物だ。
彼の幼少は「うつけ」と言われるほど悪童だったいうが、これはおそらく信長が後に都合よくでっちあげた虚像だろう。
うつけはうつけでも、実は凡庸なうつけ、つまり普通のダメ少年だった。
信長はある時から人が変わっている。
それは政略結婚させられた頃であり、この結婚により入れ替わったと考えられる。
信長の入れ替わりの相手はそのときに嫁いできた濃姫だろう。
濃姫は美濃のマムシ、斉藤道三の娘だ。
信長は女にモテたけど、成人してからの女性関係はさわやかだ。
むしろ、森蘭丸に代表される側近との係わり具合に元女の性が感じられる。

家康も入れ替わりである可能性が高い。
家康は側室も多く子沢山だったが、これはあくまでも彼の政略的な考えから来てるものだ。
その証拠に家康は女性関係のトラブルが一切ない。
しかも側室にした女は、出産経験のあるような女も多く、確実に子供を産めるマシンとして捉えてるような節がある。
家康はよくタヌキ親父と言われるが、一方でこんな男としての恋愛感情がまったく感じられない一面を持っていることからも、元女であったといえるだろう。

問題は家康がいつ入れ替わったかということだが、これはおそらく家康が7歳の頃、人質として信長のところにいた時だと考えられる。
これはちょうど信長が濃姫と結婚した時期と重なる。
つまり、信長と家康は同時に入れ替わった可能性が高い。

実は、このふたつの入れ替わりをコーディネートしたのが斉藤道三だと考えると、俄然理解しやすくなる。
斉藤道三は織田家との政略結婚として濃姫を信長に嫁がせた。
実はこのとき道三は、三河の松平家の嫡男が織田家にいることを分かった上で、濃姫の妹も一緒に送り込んでいる。
道三のDNAを受け継いでいる二人の娘は、幼いながらも優れた頭脳と類稀なリーダーシップを備えたカリスマだったと言われている。
道三が入れ替わりのメカニズムを知っていたかどうかは不明だが、仮に知らなくても道三の二人の娘が織田家の中で大きな影響力を持つことが期待できる。
だが、あえて家康が織田家の人質となっている時期に二人の娘を送り込んだことを考えると、道三は入れ替わりのメカニズムを知っていたと考えるほうが自然である。
そして、道三の計画通り、二人の娘はうまく入れ替わることに成功した。
あの権謀術数渦巻く戦国時代において、その後の信長と家康は一度も同盟関係が崩れなかった。
伝えられている信長の性格から考えれば信じられないことだが、二人の入れ替わりを前提とすれば、当然のことといえる。

異常なまでの野心家だった斉藤道三の野望は、ついに家康によって成し遂げられたことになる。
・・・・・・・・・・・・・・・

「なるほどね。あたしは戦国時代のこととかよく知らないけど、なんだか面白そうな感じはする。」
「斉藤道三のことを調べていくと、彼には不思議な力を持っていたような記録も多いんだ。神仏に通じていたことはもちろん、その奥義を極めて力を持ったようにも思えるし、生まれながらにして持ち合わせていたのかもしれない。その力が入れ替わりにどのように効くのかは分からないけど、何らかの関係があるのだと思う。そのレポートには書いてないけど、もしかしたら、道三自身入れ替わりなのかもしれない。」
「耕介詳しいね。」
「一応調べたからね。それに俺歩美の頃から歴史は好きなんだ。歩美が行ってた大学は日本史が専門の先生も結構いて図書館にはいろいろな資料もあったんだ。」

「ふ〜ん。『小説は事実よりも奇なり』だね。」
「はあ?何言ってんだよ、それ逆だろ?『事実は小説より奇なり』だろ?」
「あっ!」
(素で間違えた・・。恥ずかしい・・・。)
「それにこれは小説じゃなくて仮説だぜ。あえてそれを使うなら『この仮説は小説より奇なり』になるな。って、なんで俺がこんな理屈こねなきゃなんねえんだ。」
「わかったよ・・・。」
「お前いつからそんな天然キャラになったんだ?それとも筋金入りの理系だからか?ははは。」
耕介は私を弄るのが楽しくて仕方ないようだ。
「もういいでしょっ!」
言葉ではそう言って反発したが、一方で耕介に責められることを望んでいる自分もいるような気がした。


「さっき俺『革命は入れ替わりが成し遂げる』っていっただろ?過去の革命期には入れ替わりが起きているんだよ。日本の革命といえば何と言っても幕末だけど、その幕末にもいるんだ。坂本龍馬がその筆頭。長州にも薩摩にもいる。特に長州の松下村塾は入れ替わりが集まったんじゃないかと思える節まである。新選組の土方歳三もおそらく入れ替わりさ。土方は革命を阻止する側だけど、新選組っていう革命的な組織を作り上げたってところでは紛れもなく革命家だ。」
そう言って耕介は立ち上がり、そして私の後ろに回り込んできてた。。
耕介は立てひざをついて、左手を私の左肩に軽く載せ、右手を右肩越しに伸ばしてページをめくった。
(どきっ!)
耕介に肩を触られて、心臓が大きく鼓動した。

「ここに坂本龍馬のことが書いてある。」
耳元でささやく声の近さに、思わず心臓が高鳴った。
(耕介、近いよ・・・)

「坂本龍馬も幼い頃は『よばれたれ』つまりしょんべんたれと呼ばれるほど出来の悪い子供だったというのは有名な話。それが13〜4歳の時、地元の日根野道場に通い始めた頃から急に頭角を現すんだ。」
耕介は私の耳のすぐ近くで話している。
耕介の低くて優しい声が私の鼓膜に心地よく響いている。
(なんだか、すごくドキドキする・・・。)

「俺たちの考えでは、龍馬の入れ替わりの相手は、すぐ上の姉の乙女だよ。それを裏付ける理由はいくつもあるんだけど、そのうちのひとつは、とにかく龍馬は乙女と手紙のやりとりを頻繁にしていたこと。あの時代にしては異常なほど連絡を密にしているし、暗殺される直前までずっとそうだった。実際に手紙がたくさん残ってる。」
耕介は私の耳元で説明を続けた。
時々耕介の息が私の耳に当たる。
背中全体に耕介のぬくもりを感じる・・・。
私はだんだん意識が薄れる感じがして、耕介の話に集中できなくなってきた。
(あれ〜?気持ちいいかも・・・)

「おい!聞いてんのか?」
突然耕介に頭を軽く叩かれ、我に返った。
「えっ!?」
「『え?』じゃねえよ。何ボケーっとしてんだよ。寝てたのか?俺たちのレポートつまんない?」
「ううん、ごめん、そうじゃない・・・よ」
「まったくしょうがねえな〜。この間俺に説教した人間とは思えないぜ。でも今日は美保の可愛いところがたくさん見られて俺はうれしいけどな。はっはっは〜。」
(くっそ〜、言わせておけば・・・)
必死にそう思おうとしたが、私は既にこのシチュエーションが嫌ではなくなっている。
「それにしても、この美保が昔男の子だったと思うと、ますます愛しいよ。」
そう言って耕介は私の頭を撫でた。
耕介に触れられると、身体が反応して顔が火照ってしまう。

「ちょ、ちょっと、トイレ・・・。」
このままでいると、自分の気持ちを耕介に悟られてしまいそうなので、一旦席を外して頭を冷やすことにした。
「あ、ああ。トイレはあそこの扉だよ。」
耕介はトイレの場所を指差した。
「ありがと。」

私は、胸の高鳴りや顔の火照りを耕介に気づかれないようにトイレに向かった。
「ふう〜っ」
(落ち着け、落ち着け)

トイレのドアを開けると意外なものが目に入った。
(あれ?こんなものがついているんだ・・・)
男子の小用の便器だ。

その「あさがお」は意外と低い位置についていた。
自分の身体をあさがおの近くに持っていくと、ちょうどあさがおの高さに股間がくる。
(耕介には低くいんじゃ・・・?)
私は、耕介が少し身をかがめながら自分のペニスをつまんでここで用を足している姿を思い浮かべた。
(ああ〜何想像してるんだろ・・・でもこれなら、自分でもできるかも・・・)
ふと、そう思ったが、自分が今ジーンズを少し下げて用を足すことを具体的に想像して見ると、やっぱり難しそうだ。
意味のない挑戦をして、取り返しのつかない結果になってしまったら、それこそ耕介に呆れられる。

通常の洋式の便器は、奥のもうひとつのドアを開けたところにあった。
私は素直にあきらめて奥の部屋に入った。
(落ち着け、落ち着け)
もう一度心の中で自分に言い聞かせながら用を足した。


トイレから出てくる私を待ち構えていたかのように、耕介はレポートの説明を再開した。
私の気持ちを知ってか知らずか、耕介はコタツの向かい側に戻っていた。
「あとでレポート読んでもらえば分かるけど、入れ替わりは日本だけの話じゃない。例えば、ヨーロッパじゃナポレオンやヒトラーがそう。そのほか、マハトマ・ガンジーやポルポト、キューバ革命のチェ・ゲバラなんかもそうさ。もっと調べればまだまだいると思う。」
「すごいメンバーだね。」
「入れ替わりはある時期に集中して起きる。これも調べて分かったこと。今あげた人物も複数の入れ替わりが絡んでることが多い。だから俺は自分達の他にも入れ替わりがいるかもしれないとはずっと考えていたんだ。でも、いままで誰も入れ替わった人間には出遭わなかった。だから美保が入れ替わりだと聞いたときは、やっぱりいたんだって思ったよ。自分達の仮説は正しいかもしれないって。」
「そうなんだ・・・。でも今はその革命期とも思えないけど・・・。」
「いや革命期なのかもしれない。実際に革命を起こした奴らだって今が革命期だとは思ってなかったよ。自分のやりたいことを実現したら結果的にそれが革命だったってことがほんとんどじゃないかな。だから、お前の話からすると、もしかしたらユウが革命を成し遂げるべき男だったのかもしれないって少し思う。」
「うん・・・」
ユウのことを思い出し少し寂しい気持ちが湧いてきたが、目の前で熱心に説明してくれている耕介の顔を見たらすぐに引っ込んだ。
「レポートにあげてある男はみんなカリスマだ。だが、革命を成し遂げた男の多くは少年期に突然人格が変わって、その後の行動によってカリスマ化している。ユウの話とかぶるんだ。」
「じゃあ、ユウがいない今、もう革命は起こらないってこと?」
「う〜ん、そうかもしれない。革命は必ずしも成功するとは限らないのかもしれない。」
耕介は革命を期待していたのか、少し残念そうな表情を見せた。

「こんな話さ、入れ替わってない奴らにしたところで誰も真剣に取り合ってくんないだろ?美保は当事者だからこのレポートから何か感じてくれてると思うけど、入れ替わりのメカニズムのヒントはこんなところにあるような気がするんだ。」
「うん、耕介の言いたいことはよく分かるよ。」
耕介の真剣な説明を聞けば、このレポートがいい加減な気持ちで書かれた物ではないことは十分感じられる。
歴史に疎い私には、この仮説の信憑性について判断しようもないが、少なくとも私たち2組の入れ替わりが現実に起こっている以上、過去にも入れ替わりがあったいう前提は十分理解できるし興味深い。

「一旦、昼飯食いに行こうか。」
耕介に言われて時計を見ると、すでに時刻は1時を回っていた。


(つづく)

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第2話 カミングアウト
第3話 嫉妬
第4話 革命のカリスマ

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