第1話 ファーストキス
第2話 プライド
第3話 薄れる違和感
第4話 ユウの変心
第5話 二つの人生
第6話 再会
第7話 小さな疑問
最終話 誓い

掲示板

第1話 ファーストキス

僕は閉じていた目をそっと開けた。
目の前には、なぜか目を閉じている自分の顔があった。
「ん?」
(鏡?)と思った瞬間、今、発した自分の声に違和感を覚えた。

「あれ?」
僕は再び声を発した。
すると、その声に反応するように、目の前にある自分の顔が目をあけた。
自分の声に再び違和感を感じていると、
今度は、「目の前の自分」の表情がハッと変化し、
「えっ!?」と小さく声を発した。

僕と「目の前の自分」は、反射的に一歩ずつ離れた。


もう陽はすっかり落ちていた。
まだ、蒸し暑さが残るが、昼間の猛暑に比べればずっと過ごしやすい。
遠雷が静かに響き、涼風が通り過ぎた。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


今日は、夏休みに入って最初の日曜日。
この町の夏祭りの最終日だ。
僕は、高校の同級生3人と夏祭りに来ていた。

僕は、石川裕也(いしかわゆうや)、地元の進学校の2年。
今日は同じクラスの佐々木翔(ささきしょう)に誘われて夏祭りに来た。
僕は夏祭りに行く事は、あまり好きなほうではない。
暑いし、疲れるし、本当はクーラーの効いた家でゲームでもして過ごしたい。
典型的なインドア派かもしれない。
まあ、誘いを断る理由もなかったので、なんとなくやってきたのだ。

猛暑の中、祭りの人だかりを小一時間位ブラブラしたら、やはり「もう夏祭りは十分堪能した」という気分になり、すっかり飽きてきしまった。

すると、偶然同じクラスの女子の3人グループとバッタリ出会った。
こういう時、翔は女子と話をまとめるのがうまい。
とりあえず僕らは一緒に行動することになった。

僕は、また元気が出た。
翔たちも表情が明るくなった。
だが、僕が元気の出た大きな理由は、女子のなかに香川美保(かがわみほ)がいたからだ。


美保は幼なじみだ。
幼稚園から高校まで一緒だ。
しかし、小学校の1、2年が同じクラスだっただけで、それ以降高校1年まで同じクラスにならなかった。
それが高校2年で久しぶりに同じクラスになっていた。

美保は色白で華奢だ。
しかも、童顔なので幼く見える。

だが、勉強はできた。
中学では常に学年トップ5を維持していた。
ちなみに、僕も成績は上位だったが、どんなに調子が良くても、トップ5に食い込むことはできなかった。
美保の成績なら当然もっと上の高校に行けたが、彼女はあえて地元の高校を選んだ。

僕は美保のことは昔から好きだった。
家が近かったこともあり、子供の頃は、男女を意識することもなく一緒によく遊んだ。
親同士も仲が良かった。

当時は、友達として一緒に遊ぶのが「好き」ということだった。
クラスが離れてからは、いつの間にか美保とは疎遠となり、いっしょに遊ぶことはなくなった。
しかし、親同士はよく情報交換をしていたらしく、家の中の会話に美保が登場することが度々あった。
そのため、美保の成績が抜群に良いことは、クラスが違う僕にも情報として入ってきた。
当然、僕の成績も美保には分かっていただろう。

その美保と4月に同じクラスになり、しかも席が隣同士となった。
自然と会話が増え、二人の距離は再び近づいた。

美保は、子供の頃と同じように僕に接してきた。
いつしか、僕は美保に対して、子供の頃の「好き」とは違う、男女を意識した「好き」を感じ始めていた。

だが、僕は美保に「好き」をさとられるのが恥ずかしくて、できるだけ平静を装った。
美保は、そんな僕の気持ちを知ってか知らずか、相変わらず極めてフレンドリーに接してきていた。
僕はうれしかったが、それを顔に出さないように、さらに意識して平静を装うようにしていた。


そんな美保と一緒に行動することになり、僕は元気が蘇ってきた。
さっそく美保が近寄ってきた。
「石川くんも来てたんだ。」
「ああ、翔に誘われてね。」
いつもの調子で平静を装う。
「つまんなそうだね。」
「暑くてね・・・。」
美保は本当につまらなそうに感じたわけではなかったが、僕が美保の言葉を額面どおりに受け止めて、つまらなそうな受け答えをしたので、美保はそれが可笑しかったらしく、フッと笑みを浮かべた。
つられて、僕も表情が緩んだ。

僕と美保は、他の4人とは少し距離をおいて後ろからついていった。
僕は2人で歩いていることがうれしかった。
いくつかの露店に引っかかっているうちに、いつのまにか、というか、やはり、というか、他の4人とはぐれてしまった。
(きっと、他の4人も、うまく分かれて行動しているはず・・・)
などと、勝手な想像をして、自分を正当化しつつ、僕達はみんなと離れてしまったことを意識しながらも、一緒に来た仲間を積極的に探そうとはしていなかった。

かき氷の店の前に来たとき、美保が言った。
「かき氷食べない?」
「いいよ。」
僕達はかき氷を買うことにした。
彼女はブルーハワイを選んだ。
僕はシロップの種類など何でもよかったが、美保と同じというのもつまらないので、色が正反対のイチゴを選んだ。
お互いに少し食べると、「ちょっとちょうだい。」と、美保が、僕の食べかけのかき氷のイチゴのシロップがかかった赤い部分を、スプーンストローですくって口に入れた。
すると、今度は美保が自分のかき氷を僕に差し出した。
「こっちも食べる?」
僕も、美保のかき氷をすくって食べた。

この何気ない美保の行動が計算なのかどうなのかは分からなかったが、僕の恋心は大いに刺激された。


夕方になり、提灯に灯が入った。

「そろそろ帰ろうか?」と、言ってもおかしくない時刻になっていた。
お互い帰りの時刻は決めていなかったが、僕はまだ美保と一緒にいたかった。
「ちょっと中央公園で休んでいかない?」
美保が言った。
中央公園は、ここから5分くらい歩いたところにある。
住宅地の中にあり、木がたくさん植えられていて静かな公園だ。
僕は歩きつかれていて、ベンチに座って休みたかったこともあるが、このまま美保と二人で公園に行けば、ひょっとしたら、今日は二人の距離を一気に縮めることになるかもしれない、と、僕は自分勝手な妄想をしつつも、美保の誘いに平静を装った。

僕達は公園に向かって歩き出した。

僕は最近、(美保は僕に好意を持っているのではないか)と、考えるようになっていた。
一方で、僕が美保に好意を抱いているので、都合よく感じているに過ぎないのかもしれない、とも思っていた。
だが、今までの美保の行動や、美保がここで二人きりになることを誘ってきたことを考えると、あながち、的外れではないと思えた。
公園まで歩きながら、僕の中では期待が徐々に確信になっていた。

公園に着くと、祭りの喧騒はもうほとんど聞こえなかった。
「静かだね。」
美保が言った。
辺りは薄暗くなっていたが、人はちらほらいた。
アベックばかりであることには気がついたが、それは話題にしなかった。

空いているベンチを見つけ、僕達は座った。
美保は両手を頭の上で組んで、のびをした。
のびをしながら美保は
「疲れた〜。」
と、小声で言った。
僕は缶コーヒーが飲みたくなり、美保に訊ねた。
「何か飲まない?」
「わたしはいいや。」
意外な答えに、僕が戸惑っていると、
「あそこに自動販売機があるよ。」
と、指を指し、促してくれた。
僕は、缶コーヒーを1本だけ買ってきて、再びベンチに座った。
そして、プルタブを開け、冷えたコーヒーを一気に飲み干した。
普段の僕は、缶コーヒーの甘さを噛み締めながら、チビチビと時間をかけて飲む方だ。
だが、美保の前では、男らしく飲み干してカッコつけようとする気持ちが働いた。
なにより、一人だけいつまでも飲んでいることに気が引けた。

静かな時間が流れた。
時々吹く風が涼しく感じた。

僕は美保を見た。

美保も僕を見ていた。

(これはキスの流れだよな・・・)と思った。
美保も何かを誘うような表情をしている。
(よし、思い切って・・・)と考えるが、行動に移すことは簡単ではなかった。
そのうち、(美保は僕に好意を持っている)という確信がなぜか揺らぎだしてしまった。

「缶捨ててくる。」
僕は、やりたいことと全く違う行動をしてしまった。
さっき飲んだ缶コーヒーの空き缶を持って立ち上がった。
(何してんだ俺・・・)
自動販売機の横にある空き缶回収ボックスの穴に空き缶を入れながら、大きなタイミングを逸してしまったことを悔やんだ。

ベンチに戻ると、美保はベンチから立ち上がっていた。
(帰るのかな・・・)
僕は美保に近づきながら、
(まだ「帰る」とは言わないでほしい)と思った。
美保は何も言わずに立っていた。

僕は美保のそばまで近づいた。
美保は穏やかに僕を見つめていた。

次の瞬間、僕は、美保の肩越しに手をまわし、そっと抱きしめた。
自分でも驚くほど自然と身体が動いた。

美保の身体は小さくて柔らかかった。

美保も僕の背中にそっと手を回してきた。

気持ちが良かった。

遠くで雷鳴が響いたが、耳には入らなかった。

ずっとこのままでいたかった。

少しの後、自然と、ゆっくり、身体が離れ、
今度は目の前で見つめあった。

そして、そのままキスをした。

僕は初めてキスをした。

自然と目を閉じた。

初めて触れた美保の唇は信じられないくらい柔らかかった。

僕は大きな幸せを感じた。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

しかし、その瞬間、

記憶の中の僕は、「自分」ではなくなってしまった。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


僕は、美保とキスをした・・はずだ。
だが、目を開けると、目の前に「自分」がいた。
しかも、自分の声がおかしい。

(まさか・・・)

目の前の「自分」は、驚いた表情をしながら、腕を上げて自分の服装をチェックしている。
僕も自分の服装をチェックした。
(自分の服装じゃない・・・)

と、その時、目の前の「自分」が、僕が肩に掛けているバッグに手を伸ばし、ファスナーを開け、中から何か平たいものを取り出した。
鏡だった。

目の前の「自分」は、その鏡で自分の顔を見た。

「あああ・・・!?」
目の前の「自分」は、鏡を覗き込みながら、片手で口を押さえた。
その表情は動揺している。

僕は、鏡を「自分」の手から取り返し、自分の顔を鏡に映した。
鏡を掴んだその手は、見慣れた僕の手より色が白く指も細かった。

鏡には美保が映っていた。
驚いた表情をしている。
(やっぱり・・・)と、思いつつも、
「ああ・・・?」
と思わず声を発し、と同時に、その声の違和感に手で口を押さえた。


「い、石川くん?」
目の前の「自分」が僕を指差して質問してきた。
「うん・・・。と、言うことは、香川さん?」
今度は僕が目の前の「自分」を指差した。
質問する声は今までの僕の声ではなかった。
「ええ・・。」
目の前の「自分」がうなずいた。

「どうなっちゃんたんだろ・・?」
「なんか、入れ替わってるみたい・・だけど・・?」
「うん・・・、そうみたい・・だよね・・・。」
「なんで・・・?」
「なんでって・・・、わかんないよ・・。」

混乱していた。

お互いの様子を見れば、僕と美保の身体が入れ替わっているようだった。
いや、入れ替わっているとしか思えなかった。

だが、そんなことが受け入れられるはずもない。

「キスで変わっちゃったのかな・・・」
美保と思われる目の前の「自分」が言った。
「はあ?」
僕は頭の中が真っ白になり、何も考えられなかった。

「もう一度キスしてみよう。」
「目の前の自分」が提案してきた。
「え!?」
僕は、少しびっくりした。
僕にはその提案を拒否する理由は全くなかったが、「自分」とキスすることには、抵抗を感じた。

僕がはっきりしない態度をとっていると、
「多分キスで何かが起きたんだよ。だからもう一度キスしてみようよ。」
と「目の前の自分」が再度提案してきた。
「うん・・・。」
僕はうなずいた。

「いくよ。」
目の前の「自分」が僕の両肩に手を置いた。
目の前の「自分」は背が高く、僕を見下ろしていた。
目の前の「自分」が顔を近づけてきた。
自分の顔が近づいてくることは、やはり、あまり気持ちのいいものではなかった。
僕は、思わず目を閉じて、顔を少し上に向けた。

僕の唇に、相手の唇が触れた。
唇の感触は、柔らかかったが、それだけだった。
(元に戻れ)
と、考える余裕はなかった。
早く終わってほしいと思っていた。

唇が離れた。

僕は目を開いた。
が、そこには、相変わらず「自分」がいた。
その表情で、大きく落胆していることがよくわかった。

「もう一度やってみよう。」
「目の前の自分」は必死だった。
もう一度キスをした。
今度は、
(元に戻れ)
と、願いながらキスした。

しかし、戻らなかった。

目の前の「自分」はベンチに座り込んでしまった。
僕も、疲れていたので、隣に座った。


「ねえ、どうする?」
隣の「自分」が言った。
少し女っぽい口調が変だ。
「どうするって言われても・・・、どうする?」
僕は何のアイデアも思い浮かばず、逆に聞き返してしまった。
相変わらず、自分が発する声に違和感がある。

「はあ・・」
隣の「自分」がため息をついた。
ため息の理由が、僕から何の答えも得られなかったからなのか、僕達に起こった信じられない出来事のせいなのかは、僕には分からなかった。


その時、僕は、自分がトイレに行きたいことに気がついた。
気がついた途端、それが、かなり切羽詰った状態であることが感じられた。
「あ、あのさ・・・」
僕は隣の「自分」に話しかけた。
「トイレに行きたいみたいなんだけど・・・」

隣の「自分」が僕を見つめた。
すると、ハッと表情を変えた。
「そう言えば、私さっき、トイレに行こうと思ってたんだ。」
「自分」は僕の手を持って立ち上がった。
「行こう。」
僕は、手を引かれるまま立ち上がり、歩き出した。
「どこに行くんだよ?」
歩きながら僕は尋ねた。
「コンビニ。」

おそらく、美保はここからどこのトイレが近いかを考えていたのだろう。
確かに、2、3分歩けばコンビニがあったのを思い出した。

それにしても、この状態でトイレに行くということは・・・
自分が自分でトイレを済ませる、という当たり前のことが、とても常識はずれのことのように感じた。

「ねえ、」
「自分」が僕を引っ張りながら聞いてきた。
「ちゃんとできる?」
聞きたいことはなんとなく分かった。
しかし、「できる。」とは答えられなかった。
やってみなければ何ともいえなかった。
「ちゃんとやってね!」
念を押されたが、答えようがなかった。
僕の手を引っ張る「自分」は、まっすぐ前を向いて早足で歩いていた。
何かを我慢しているような表情だった。
涙を流しているようにも見えたが、それ以上は暗くてよく分からなかった。
僕は、「ちゃんとやるよ。」とだけ答え、早歩きでついて行った。

早く歩くと胸が揺れるのが感じられた。
美保は、少しヒールのあるミュールを履いていた。
なんだか脱げそうで、僕にはちょっと歩きにくい代物だった。

僕は小走りになりながらも、
(さっき、美保が飲み物を欲しがらなかったのは、こういうことだったのか。)
などと、意外と冷静なことが頭に浮かんでいた。

コンビニの明かりが見えてきた。

僕を引っ張る「自分」は、僕の手を放し、歩く速度を緩めた。
慌ててコンビニに入るのは、「いかにも」という感じだったので、僕らは、自然と店に入ろうとした。

しかし、僕の我慢も限界が近いように思えた。
(もし、先客がいたらどうしよう・・・)
と、ごく当たり前の心配をしたが、本当に心配すべきなのはその先だ。

店に入ると、「自分」は、僕の肩からバッグを取り上げ、僕に早くトイレへ行くように促した。

幸い、トイレは空いていた。
洗面台の鏡を横目で見た。
美保が映っていた。
(女子のほうでいいんだよな・・・)
少し心配になり、股間を手で触ってみた。
いつも付いているモノの感覚はなかった。
コンビニのトイレは男女共用と女子用に分かれていたが、念のため男女共用に入った。
和式の便器だ。

美保は、白いTシャツの上に薄いグリーンのチュニックを着ていた。
下は七分丈のジーンズをはいていた。

もう、何かを考えている時間はなかった。
一段上に乗り、便器を跨いだ。
ジーンズのボタンを外し、ファスナーを下ろし、ジーンズとショーツを一緒に下ろした。
意外にもスムーズにできた。
そして、上着を少し持ち上げて、便器にしゃがんだ。

すぐに出た。

我慢から開放された快感を感じた。

と、同時に股間をのぞいて見た。
うっすらとした茂みの向こうから勢いよく出ていた。
案の定、そこに付いているはずのものは付いていなかった。

用を足しながら、ハッと気がついた。
(これは夢だ!)

僕は小さい頃、おしっこをする夢を時々見た。
用を足して、ハッと気がつくとおねしょをしていた。
大人になってからも、おしっこがしたくなる夢は見た。
だが、大人になってからは、おしっこする段になると
(これは夢だ。ここでしてはいけない。)
と自制心が働くようになり、おねしょをしなくなった。

(しまった!)と思い、おしっこを止めようと思ったが、止まらなかった。
排出の快感が続いた。
それにしても、リアルだ。
もう夢から覚めてもいいはずなのに、一向にリアルな感覚のままだった。

もう、止めることはあきらめた。
おねしょを覚悟した。

やがて、出るものが出きって自然と止まった。

(拭くんだよな・・・)
思ったより股間が濡れたような気がしていた。
トイレットペーパーを適当に取り、恐る恐る表面を拭いてみた。
(ああ・・やっぱり何もついてないんだな・・・)
2度目のトイレットペーパーを手に取り、今度は少し強く拭いた。
「ちゃんとやってね!」という、さっき美保が言った言葉を思い出し、もう一度拭いた。

ふと、今の自分の股間に対して好奇心が沸いてきたが、ここまで来る途中の「自分」の真剣な表情を思い浮かべたら、それ以上のことはできなかった。

僕は、立ち上がってショーツとジーンズをはき直した。

トイレから出て、洗面台で手を洗いながら、鏡を見た。
鏡の中には、やはり美保がいた。
(長い夢だな・・・)
とも思ったが、あまりにもリアルなので夢ではないことは明らかだった。

売り場のほうへ戻ると、「自分」が待っていた。
「自分」は、バッグの中からハンカチを取り出し、僕に渡した。
「ありがと・・」
僕は受け取り、手を拭いた。

すると、小さな声で「自分」が言った。
「私もしてくる。」

「えっ!?」
僕は、驚いた。
目の前の「自分」が自分の知らないところでトイレに行くことを想像したら、猛烈に恥ずかしくなってきた。

(でも、俺はトイレに行きたい状態ではなかったよな・・)
「なんで?」
僕は聞き返した。
「私もしたくなったから。」
当たり前の理由が返ってきた。
「それならしょうがないけど・・・。ちゃんとできる?」
愚かにも、さっき美保が僕に聞いたことを尋ねてしまった。
この質問には答えられるはずがなかった。
だが、
「できるよ。」
と「自分」ははっきりと答え、僕の首にバッグを掛けて、トイレのほうに歩いていってしまった。
美保は何かを確かめるためにトイレに行くのかもしれない、と思い、僕はまた、恥ずかしくなった。

「自分」は、さっき僕が入っていた男女共用に入っていった。

(大丈夫かな・・・。)
(和式のトイレで立ってするのは結構難しいぞ・・・。)
(今日は結構汗かいたから、蒸れてるよな・・・。)
(臭ったらイヤだな・・)

気が気ではなかったが、覗き込むわけにもいかない。
仕方なく、店内を眺めた。

眺めて、ふと、いつもより目線が低いことに気が付いた。
僕の身長は175cmだった。
高校に入ってから10cmほど伸びていた。
美保は152、3cmだと思う。
僕とは20cm以上差があった。

店内は、いつもと変わりがなかった。
5〜6人の客がいたが、祭りだからといっても浴衣や祭半纏の人はいなかった。
僕の近くで立ち読みをしている人、飲み物の陳列棚の前で飲み物を選んでいる人、レジで会計をしている人、皆、日常の景色だった。
ただ、それを眺める僕の目線が、いつもより明らかに低かった。

僕達だけが変わってしまったようだ。
そして、変わったことが分かっているのも僕達だけのようだった。
トイレの近くで立っている僕の姿を見ても、誰も気に留めなかった。
僕自身も日常の景色のひとつだった。

(まだかな・・・)
トイレに入った「自分」はなかなか出てこなかった。
少し不安がよぎった時、トイレの扉が開いた。

「自分」が出てきた。
洗面で手を洗いながら、僕と同じように鏡を見ていた。
僕はチラッと見た程度だったが、トイレから出てきた「自分」はじっくり見ていた。

「バッグからハンカチとって。」
「あ、わかった・・ちょっと待って・・」
僕はバッグからもう一度ハンカチを取り出し「自分」に渡した。
渡しながら、
「ハンカチなら、お尻のポッケにも入ってるよ。」
と、一応僕もハンカチは持っていることを主張した。

「ずいぶん時間がかかったけど、どうした?」
「臭わなかった?」
などと、聞きたいことがあったが聞かなかった。
目の前の「自分」が何か思い詰めた表情をしていたので、とても聞くことはできなかった。

「とりあえず、何か買って出よう。」
ここは人が多くて、話したいことが話せなかった。
「うん。」
目の前の「自分」は頷き、僕達はそれぞれ飲み物を買ってコンビニを出た。

僕達は、また、公園に向かって歩き出した。
僕は歩きながら、今買ったペットボトルのお茶のキャップをあけ、お茶を一口飲んだ。

「どう考えても入れ替わってるみたいだね。」
僕は歩きながら話しかけた。
「うん。私は完全に石川君になってる。」
「俺も香川さんの身体になってるみたいだけど、そっちからもそう見える?」
僕は女の声に強い違和感を感じながら会話を続けた。
「見えるよ。あなたは、まるで私だもん。」
僕はトイレで身体が今までの自分でないことを確認していた。
美保も同じだろう。
お互い、この変化を受け入れるしかなかった。

「どうしようか・・・?」
「うん、本当はわたしそろそろ帰らなければならないんだけど・・・」
時刻は8時を回っていた。
入れ替わったまま、帰ることを覚悟しなければならなかった。

「ねえ、もう一度してみない・・・」
隣を歩く「自分」が言った。
「え?何を・・」
僕は聞き返した。
すると、
「キス・・」
と、小さな声で恥ずかしそうに「自分」が答えた。
その女っぽい「自分」の姿が、僕にはちょっと気色悪かった。
僕はそんな「自分」とキスをするなど、本当はしたくないが、この状況を改善しようとして美保が必死になっていることを思い、僕もやってみようと答えた。

公園に戻ってきた。
あのベンチは空いていた。
ベンチの前までやってきたが、さっきのキスから時間がたったせいか、改めてキスすることがとても照れくさかった。

僕達は辺りに人がいないことを確認して、もう一度キスをした。

しかし、状況は変わらなかった。
元に戻りそうな気配も全くなかった。

もう、打つ手はなかった。
僕達は、入れ替わったまま家に帰ることを前提に、これからの行動計画を立てるしかなかった。


「もう、このまま帰るしかないね。」
落胆の表情で「自分」の姿の美保が言った。
僕も帰りが遅くなればなるほど面倒になると感じたので、早く結論を出したほうが良いと思った。

僕達は、とりあえずケータイは交換することにした。
僕が美保のケータイを持っていても仕方がなかったからだ。

僕が下げているバックから美保のケータイを取り出し「自分」に渡した。
僕は「自分」のズボンのポケットに入れていたケータイを受け取った。
お互いにケータイを確認した。
僕のケータイを女の子の手が操作している。
自分が操作しているとは思えない。
僕のケータイに着信はなかった。
「自分」は美保のケータイを開いて何やら操作していたが、すぐに閉じた。

「着信があっても今日は出られないよな。」
「うん。」
「俺はほとんど着信はないから何とかなると思うけど、香川さんは大丈夫?」
「うん、何とかメールで済ます。」
言葉と姿がちぐはぐな会話をした。

それぞれの家のことについても情報を交換した。
美保のバッグには小さなメモ帳とペンが入っていた。
僕達は街灯の近くのベンチに移動して、家族構成、家の間取り、服や下着の収納場所など生活に必要と思われる情報を、お互い思いつくままに書いた。

「必要なところ以外は見ないでね。」
「うん、わかってるよ。」
「できるだけ身体も見ないで。」
「自分」の姿の美保が真顔で言った。
僕も同じ気持ちだった。
好きな異性に自分の身体を見られることが、どんなに恥ずかしいかを痛感していた。

僕達は、明日図書館でもう一度会うことにし、今日は家に帰ることにした。

公園からしばらくは同じ道なので一緒に歩いた。
歩きながら、なぜこうなったのか考えたが、やはり分からなかった。
あのキスで入れ替わったことは、はっきり記憶に残っていた。

お互いが別れる交差点まで来た。
ここまで来れば、それぞれの家はすぐそこだ。
僕は「自分」と別れて、ひとりになるのがとても恐く感じ、交差点で歩みを緩めた。

僕の姿をした美保が振り返った
「じゃあ、ここで。お互いにがんばりましょ。」
美保は覚悟ができているようだった。
僕も覚悟を決めるしかなかった。
「ああ、了解。」
僕は、不安な気持ちを必死に抑えて答えた。

僕と美保は別れてそれぞれの家へ向かった。
美保は僕の姿のまま僕の家へ向かった。
僕は美保の姿のまま美保の家へ向かった。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


(美保の家に行って、うまくやれるだろうか・・・)
また、心配になってきた。
(家族は僕のことを美保だと認めるのだろうか・・・)
不安は大きくなるばかりだった。

美保の家が見えた。
不安で足取りは重かった。
足が止まりそうになるのを必死に抑え、やっとの思いで歩いていた。

玄関の前まで来た。

僕は、玄関の前でもう一度、自分の手や服装を確認した。
やはり、美保だ。
僕は、大きく息を吸って、思い切ってドアを開けた。

「ただいま。」
と、言おうとしたが、声が出なかった。
見たことのない玄関に、さっそく動揺した。
僕はミュールを玄関の隅に置いて、床に上がった。
足の裏が汗ばんでいた。

玄関を上がってすぐにリビングがあった。
リビングでは美保のお母さんがテレビを見ていた。
「ただいま。」
僕は思い切って、声をかけた。
緊張で声が震えた。

「あ、おかえり。」
お母さんが僕に気がついた。
「お祭りどうだった?」
「うん、疲れた。」
「ご飯はどうするの?」
「うん、お腹すいてないからいらない。」
僕は、懸命に会話しながらも、お母さんの様子を慎重に観察した。
お母さんは、半分テレビに意識が行ったまま会話をしていたが、僕のことを普通に美保と認識しているようだった。

これ以上の会話は僕には限界だったので、お母さんとの会話は早々に切り上げた。
お母さんも特に会話を続けようとしなかったので、僕はリビングには入らずに、そのまま2階に上がり、あらかじめ美保から教わっていた美保の部屋に行った。

美保の部屋は8畳ほどの洋室だった。
勉強机、ベッド、本棚、姿見、チェストなどが置かれていた。
部屋には作り付けのクローゼットも付いていた。
小さなテレビまであった。
窓にはブルーのシンプルなカーテンが掛けられていた。
僕の部屋とは違い、きれいに整理整頓されていた。
(広いな・・・)と、思った。
僕の部屋は10畳程の部屋をパーティションで2つに分けたうちのひとつだ。
もうひとつは妹の部屋になっている。
それぞれの部屋は5畳ほどの大きさだったが、勉強机とベッドと本棚に加え、
簡易なクローゼットも置かれていたので、とても手狭だった。

それに比べると、美保の部屋は数字以上に広く感じられたが、いつもより目線が低いので、そう感じるのかもしれなかった。

僕は、とりあえず、ひとりになれて、ほっと一安心した。
と同時にどっと疲れがでて、ベッドに横になった。

横になりながら、股間に手を当ててみたが、やはり何も付いていなかった。
胸を触ると、ブラジャー越しに膨らみがあった。

僕は、ベッドから起き上がり、姿見の前に立った。
いつもの見慣れた美保が立っていた。
前髪を垂らし、今日は髪を後ろで束ねた、僕の好きな美保がいた。
(かわいい)
と、思ったとき、メールの着信を知らせるバイブレーションの音がした。
美保からだった。
何かあったらメールで連絡を取り合うことにしていた。
『今部屋から。こっちは今のところうまくいったよ。そっちは?』
『こっちも部屋から。今のところ問題なし。』
『了解。よかった。でも部屋汚いぞ〜^^;』
『ゴメン、勘弁』
『冗談だよ、じゃまた』

美保はうまくいっているらしい。
僕は少しほっとした。

「美保〜!、お風呂入れるよ〜、どうすんの〜!?」
今度は、1階からお母さんの呼ぶ声が聞こえてきた。
「わかった〜、今入る〜」
僕は部屋のドアをあけて、大き目の声で答えた。
(聞こえたかな・・・?)
お母さんの返事が無かったのでちょっと心配になったが、
(聞こえなければ、もう一度聞くよな・・)
と思い、風呂に入る準備をした。

髪を後ろで止めているゴムを外した。
髪が耳の横に広がった。
鏡を見ると、さっきとは印象の異なる美保がいた。

美保から言われてたとおり、チェストからパジャマと下着を取り出した。
バスタオルはバスルームの前の洗面所にあるはずだ。

バスルームに行こうと1階に下りると、リビングから男の声がした。
(あれ?お父さんかな?いつの間に来たんだろ?)
僕は、自分を見られるのがちょっと怖かったが、思い切ってリビングを覗いた。

リビングには、お母さんのほかにお父さんと弟もいて、一緒にテレビを見ていた。
弟の名前は真(しん)、3つ下の中学2年だ。

お父さんが僕に気づき、「風呂か?」と聞いてきた。
お母さんと弟も僕を見た。
僕は、「うん。」とだけ答えバスルームに向かった。
みんな僕を見ても表情をかえることはなかった。
それは僕の姿が紛れも無く美保であることの証拠だった。

僕は、みんなに風呂に入ることをアピールできたので、
少し安心してバスルームに行くことができた。
バスルームは洗面所の先にある。
僕は洗面所に入り、ドアを閉めた。

上着を脱いだ。
上半身がブラジャーだけになった。
洗面所の鏡に映った自分の姿を見て、僕はちょっとエッチな気分になった。
いつもなら下半身が反応してしまうところだが、股間に手を当てても何も無く、力も入らなかった。

次にジーンズを脱いだ。
僕は下着だけの姿になった。
心臓の鼓動が速くなった。
僕は気持ちを落ち着けるために、ゆっくり深呼吸した。

普段の美保はとても華奢な印象があったが、今、鏡に映っている美保は、ほどほどに肉が付き、女性らしい丸みを帯びた、柔らかい身体のラインをしている。
(きれいだ・・・)
美保からは、あまり見るなと言われていたが、見入ってしまうほど、僕には魅力的だった。

少し気持ちを落ち着かせて、ブラジャーを外した。
後ろのホックをずらす方向がよくわからず、少してこずったが、
いじっているうちになんとか外れた。

胸が急に開放された。
小ぶりの乳房が表れた。
胸は大きいほうではないなとは思っていたが、これは想像どおりだった。

最後にショーツを脱いだ。
脱いだ服や下着は、洗面所に置いてあった脱衣籠に入れた。
股間の茂みは僕に比べるととても少なく、うっすらと生えている程度であり、少し足を開くと大事な部分が露出した。
僕の心臓は、鼓動が限界まで高まった。
僕はもう一度ゆっくり深呼吸して、バスルームに入った。

シャワーの温度を慎重に調節して、まずは全身を流した。
そのまま、浴室用のイスに腰掛けた。

身体を洗う順番は特に指示がなかったので、
とりあえず、最初は顔を洗った。
(そういえば、化粧とかしてないのかな?)
と思ったが、美保は何も言ってなかったので、
僕はいつもどおりボディーソープで顔を洗った。
髪が少し邪魔だったが何とか洗えた。

次に髪の毛を洗った。
シャンプーの量が分からなかったが、美保は僕より髪が長いので、いつも自分が使っている量の倍くらい使ってみた。
だが、足りなかった。
一度流してから、今度は思いっきり多めに手に取った。
今度は泡がよく立った。
長いといっても、肩くらいの長さだが、僕にとって、この髪の長い感覚は全く初めてだった。
今までは、ほとんど頭の上だけ洗っていれば済んだが、この髪をすべて洗うのは思いのほか時間がかかった。

次に、リンスを手に取った。
リンスをしながら、長い髪の女の子がリンスをしているCMが思い浮かび、自然とその通りのしぐさをしている自分が少しおかしかった。

僕は髪を洗うだけでかなり疲れた。

ボディブラシは、ピンクのに紐のものを使うよう美保からの指示があった。
指定されたボディブラシにボディソープを載せて泡立て、上から順番に全身を洗った。
胸と股間は手で擦って洗った。

最後にシャワーで全身の泡を流した。
すべての泡を流してすと、ふと股間が気になり、左手でシャワーを持ちながら、右手で股間に触れてみた。

股間が縦に割れているのが分かった。
割れ目に沿って少し指を動かすと、その指が少し奥に入った。
そこが敏感な場所であることはすぐに感じたが、
それ以上は、ちょっと怖くなり、やめた。

身体が火照った。

シャワーの温度を少し下げ、火照りを抑えてからバスルームを出た。
湯船には浸からなかった。

洗面所の棚からバスタオルを取り出し、身体を拭いた。
何度も髪の毛から水が滴り落ちた。
(髪の毛は最初によく拭いておくべきだな)
と思いながらどうにか全身の露を拭き取った。

部屋から持ってきたショーツを履き、キャミソールを着た。
上下のパジャマを着て、タオルを1枚持って洗面所を出た。

リビングでは、相変わらず3人でテレビを見ているようだったが、
顔は出さずに2階の部屋に戻った。

美保の部屋にはドライヤーもあった。
僕は髪の毛を乾かした。
これも、時間がかかった。
短髪の僕はせいぜい1分もドライヤーを当てれば完全に乾いたが、美保の髪はいつまでやっても乾かなかいような気がした。
いい加減、ドライヤーを持つ手が疲れたが、僕は根気よくドライヤーを当て続けた。
やがて、やっと髪がサラサラしてきたので、適当におしまいにした。
(ドライヤーの前には髪の水分をよ〜くとったほうがよさそうだ)

身体を洗って髪を乾かすまでの一連の行動は、思いのほか体力を要した。
ベッドに腰掛け、さっきコンビニで買ったペットボトルのお茶を飲んだ。
「ふー・・・」
思わず出た声は女の声だったが、すでにあまり違和感を感じなくなっていた。

チェストの上に置いてあったブラシで、髪の毛をとかしてみた。
髪はまっすぐで柔らかく、2〜3回ブラッシングすれば、すぐにスーッと通るようになった。
鏡を見ながらブラッシングをしているその仕草は、何の違和感もない女の子だった。
その僕好みの姿を見たら、
また心臓がドキンとした。

ベッドに戻り、テレビでも見てみようかとも考えたが、もう身体がへとへとに疲れていたので、歯を磨いて寝る準備をすることにした。

洗面所は2階にもあった。
歯ブラシは白地に赤い文字のもの、歯磨きは家族と共通のものだった。
歯を磨いていると、弟の真が1階から上がってきた。
「あれ? 姉ちゃん、もう寝るの?」
時刻は11時になるところだった。
「うん。ちょっと今日は疲れたから。」
僕は歯を磨きながら答えた。
「ふ〜ん。」
真は、珍しいな、という表情して、そのまま自分の部屋に入っていった。
(「もう」ってほど早い時間じゃないだろ。)
(いつも美保は何時頃寝てるんだろ?)
歯を磨きながら、僕は少し疑問に思った。

洗面所の隣がトイレだ。
寝る前には済ませておかなければならない。
あまりしたくはなかったが、トイレに入った。
便器に腰掛け、用を足そうと思ったが、なかなか出なかった。
何も付いていない股間が気になる。
やがて、少し出てきた。
昼間のような勢いはなかった。
徐々に勢いが出てきたところで止まった。
なんとなく、まだ出きっていないような気がして、しばらく待つと、また、少し出た。
なんだか、きりがないように思えたので、僕は股間を拭いた。
この時、身体が変わってしまっていることを強く意識させられた。

部屋に戻り、寝る前にケータイを確認した。
翔からメールが来ていた。
『よう、今日はどうした?美保ちゃんといなくなっちゃったけど、何かいいことあった?報告しろ!』
翔は、僕が美保に気があることをうすうす知っていた。
『あったよ。あとでゆっくり話すから、また後で。』
僕は適当に返信した。
すると、すぐにまた翔からメールが来た。
『かー!やっぱり、そうだったのかよ。お前らうまいことやりやがって。おれのお陰だぞ。忘れんなよ。』
『多謝、多謝。』
僕は適当に切り上げようとした。
『何だよ、その冷たい返信は。まさか、まだ一緒か!?』
『想像に任せるよ。』
『あー、もう分かったよ。ちくしょー!じゃーな。』

翔は気持ちのいいやつなので、気を遣って切り上げてくれたのが分かったが、変な想像をさせたかもしれないと、ちょっと後悔した。

寝る前に、美保にメールをしておこうと思った。

『風呂、歯磨き、完了。何とかうまくいってる。今日はこれで寝るよ。』
送信した。

僕は一応7時にケータイの目覚ましをセットし、
ベッドに横になった。

美保から返信が来た。
『了解!こっちも大丈夫。』
美保にしては簡潔だった。
あまり落ち着いて打てる状況ではないのかもしれない。

僕は部屋の電気を消した。

ベッドの中で自分の胸を触った。
柔らかな膨らみがあった。
次に股間に手を当てた。
何も無かった。
直接確かめたくなり、ショーツの中に手を入れた。
指先で慎重に形をを確かめた。
くすぐったくなり、少し強めに抑えた。
勃起とは違う軽い快感にゾクッとした。

僕はいったん手を引っ込めた。

もっと触ってみたい、という好奇心はあったが、とても疲れていたせいか、快適なベッドの中で僕はそのまま眠ってしまった。

<つづく>

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■ 記憶の中の僕 ■

第1話 ファーストキス
第2話 プライド
第3話 薄れる違和感
第4話 ユウの変心
第5話 二つの人生
第6話 再会
第7話 小さな疑問
最終話 誓い

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