IF三話 〜 第3話 裕也の道、ユウの道 〜
IF四話 〜 第4話 悪夢 〜
IF五話 〜 第5話 詩織 〜
IF六話 〜 第6話 夏休みの価値 〜
IF七話 〜 第7話 美保のいない世界 〜
IF八話 〜 第8話 The Blank of 4-Years 〜

これは、ダークサイドさんが執筆した「記憶の中の僕」の「IF六話」です。

IF六話

〜 第6話 夏休みの価値 〜


「あぅぅぅぅ」
裕也はベットの上でのたうち回っていた。
裕也が美保になって3度目の生理、だった。
最初の時は、突然の事に慌ててユウに電話した裕也はユウの落ち着きぶりに激高したものだ。
もっとも、何度と無く経験してきたユウから見れば慌てる裕也の方が滑稽だったのかも知れないが。
二度目の生理はユウの『入れ替わり無かった事宣言』のショックが引ききらぬ頃で美保の弟である真に血が流れていることを指摘されるまで気づかなかったという醜態をさらしている。
そして3度目の今回はその痛みから学校を休みベットの上で醜態をさらしていた。
昨夜は生理通で全く寝る事もできず、朝になって美保の母親に泣きついたのだ。
『生理通を何とかして欲しい』と。
薬は飲んだものの効き目はまだらしく、鈍痛の所為で寝る事もできない裕也はベットをのた打ち回るしかなかったのだ。
しかもその鈍痛から何かをする事自体が出来ないのだ。
テレビを見ていても、本を読んでいても集中する事が出来ない痛み。
薬を飲んで数時間後、美保のベットの上で裕也は気持ちの良い寝息を立てていた。
やっと薬が効いたのだろうが、気持ちよさそうな表情で寝ている裕也。
しかしその心地よい眠りは長くは続かなかった。


「ううううぅぅぅぅ。」
裕也はベットの上に座ったまま溜息をついていた。
やっと薬が効いて眠りに付いた裕也はここの所、毎晩のように見ていた夢で飛び起きていた。
夢の内容はいつも同じ。
詩織を男、裕也として抱き、最後は女、美保として胎内射精されて目が覚める。
裕也が詩織と関係を持ってから毎晩のように見る夢だった。
『ペニスが欲しい』
詩織と関係を持った裕也が一番強く思ったことだった。
裕也がこの様な夢を見るのは日常生活では、気にしないようにしていた事が詩織と抱き合う事でペニス願望が急激に湧き上がった結果なのかも知れない。
裕也からすれば詩織に流されて結んだ関係だった。
しかし、それによって失われていたはずの裕也の男の本能が鎌首をもたげていた。
詩織に挿入したい。
詩織を悦ばせたい。
そして、詩織の胎内に射精したい。
その意識が男として詩織を抱く夢につながり、女の身体である事が最後に女としての快感に翻弄される夢にと変わって終わる。
裕也は夢を見るたびに空しさを感じていた。
美保になってから、詩織と関係するまで感じたことの無い空しさだった。
現実はもとより夢の中でも射精できない。
裕也は男としてのオナニーでの射精の感覚を覚えていた。
その大きな快感のピークを覚えていた。
女とは違う男の快感。
裕也は苦笑いを浮かべるとそれを取り戻すためにどうすべきかを考えながら再び眠りにつく、朝はまだ先なのだから。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


裕也が詩織と肉体関係を持って既に3週間が過ぎていた。
既に中間試験も終わり、そろそろ順位の発表の時期だった。
裕也やユウ、詩織の通う学校はこの辺りでは有名な進学校で、定期試験毎に順位が張り出されるのが慣習となっていた。
「えっ?」
そして、張り出された結果に誰もが驚いていた。
一年の2学期にトップテン入りしてから一度も11位以下に落ちたことのない美保が26位、逆に一度もトップテン入りを果たした事の無い裕也がトップテン入りを果たしていたのだ、それも5位。
もちろん、これは外から見た順位であり、言うまでも無く26位の美保の中身は裕也、5位の裕也の中身は美保である。

裕也は中間試験の成績順位が張り出された当日の放課後、ユウに屋上に呼び出された。
「久しぶりだね、石川君。」
「もう名前で呼んではくれないんだね、香川さん。」
「私は石川裕也という人を友達に持った記憶は無いからね。」
「そう。」
「それにしても石川君、凄かったね。
その身体で5位は大変だったでしょ?」
「な、何のこと?」
「ふふふ、まぁいいわ。
今から言うのは独り言。
正直に言うとね、石川裕也の脳よりも香川美保の脳の方が記憶力が遥かにいい見たいなのよね。
同じ程度の事を遥かに短時間で、容易に記憶できるんですもの。
もっとも、記憶した後の活用はまた別だけどね。
お蔭で元の頃と同じ程度の勉強でも順位が上がったのがなによりの証拠、かな。
その意味で石川君はかなりの時間を割いたんじゃない?
なんていっても試験範囲発表後、部活休みにしたくらいだモノね。」
「・・・・・・」
「まさか突然、勉学に目覚めたなんていわないでよ。」
「可笑しいかい?
僕が勉学に目覚めたら。
自分でもびっくりしてるんだけど、あの夏祭りの日に美保と気持ちが通じ合えたこと、そして夏の大会での事、部長選出された事、最近いろんなことで自分に自身が持てるようになったんだ。
だから勉強も頑張ってみた。
あの順位はその結果さ。」
ユウは自分のことを話し出した。
「あの日以降はちょっと微妙な関係になってしまったけど・・・。
でも俺、今勉強が楽しいんだ。いろいろなことを覚える、知る、学ぶということが面白くてしょうがない。」
「・・・・。」
裕也はユウが自分を語るのを黙って聞いていた。
「そして、それが生かせる道が開けている今がとても楽しくて、何も迷わずに突き進める感じがするんだ。
美保、香川さんが本調子じゃないのに俺だけ浮かれたことを言ってて悪いんだけど・・・。
今回すごく成績下がったみたいだし・・・。
そんな時なんだけど・・・・・」
そこまで言うとユウは一旦口を閉じた。
そして目を瞑ると何かを決心したように目を開き裕也を見つめると、表情を引き締めて口を開いた。
「美保、俺、あの時キチンと伝えてなかったけど・・・。
俺、美保のことが好きだ。
改めて付き合ってくれないかな?」
(俺は裕也として美保の事が好きだった。
だからあの時、あの夏祭りの日、告白するつもりだったし、キスもした。
だけど・・・・・
今の俺には素直には受け入れられない。
ユウはそれを認めていないけど、僕はあの時まで裕也だった。
その俺が裕也と付き合うなんてできないし、したくもない。
俺はユウと恋人の関係は望んでいない。)

「ダメ・・かな・・?」
裕也が返事をせずに自分の事を見つめ続けている事に不安を感じたユウは自身なさそうにそう尋ねた。
「前にも言ったけど、俺の意識は石川裕也のままだ。
香川美保のものじゃない。
だから今でも君が香川美保だと信じているし、元の身体に戻りたいと思っている。
その俺に自分の身体と付き合えといわれてもそれは出来ない。
それに石川裕也としての自分からすれば石川裕也を名乗る君は友人でさえないんだ。
俺という人格は石川裕也という男性と気持ちを通じ合った事は無いからな。
俺にとってお前という存在は、戻るべき身体という要素を取り払った場合、ただのクラスメートでしかない。」
はっきりとした裕也からの拒絶の言葉。
ユウは裕也の返事を聞くとがっくりと肩を落とした。
「わかったよ。
俺も美保を困らせるようなことはしたくない。
美保が元に戻ってくれるまで、いつまででも待つ。
いや、別に元に戻らなくてもいい。
俺は美保を幸せにしたい、いやしなければならないんだ。
だから俺に出来る事があれば美保の力になりたい。」
「前にも言ったよな、下の名前で呼ぶな。
お前に呼ばれると虫唾が走る。
そうだ、力になりたいなら一つだけ頼みがある。」
「なんだ、俺で出来る事なら力を貸すよ。」
「正確には石川裕也の両親の力を借りたいんだ。」
「俺の両親の?」
「もし、俺が君の言うように作り物だったら、石川裕也だと思い込んだ香川美保の想像の産物だったらおれはこの身体を美保に返して消える必要がある。
それを確認するために力を貸して欲しいんだ。
裕也の両親であれば本人が覚えていない子供の頃の事を知っているはずだ。
俺に逆行催眠を掛けてもらって、過去の俺と照合すれば俺が本当の石川裕也か否かが分かるはず。
ついでに君もやらないかい?
そうすれば君自身が主張するように石川裕也本人かも分かるだろ?」
「・・・う、うん、わ、わかったよ・・・・・一応聞いてみる。」
ユウはそう言うと慌ててその場を去っていった。
(言わない事がバレバレだよ、ユウ。)
裕也は去っていくユウの慌てぶりを見て黒い笑いを浮かべながら言葉にはせず、心の中でそっとそう呟いていた。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


裏では裕也とユウの関係が完全に破綻するイベントが会ったりしたものの、この中間試験をきっかけに石川裕也の立場は大きく変わっていく事になる。
今までもそうだったが、中間試験の順位という形ではっきりとした結果が出た事もあり、ユウの立ち位置は変化した。
美保と見做されていた裕也は今まで事はともかく、美保になってからの内容に関しては見事に答える事で立ち位置を何とか確保していた。
それに対して割り込むように出てきたのがユウだった。
昔の美保ほどの含蓄や切れはなかったが質問に対し、確実に答えを返していく点では今の美保である裕也よりも力強く感じられた。
この辺りは美保であった頃の自身がそのまま力になっているのだろう。
『こいつは夏休みで変わった』
それがクラスメートの認識となり、ユウが裕也の今までと違う行動をとってもそれはこの夏の間の変化だと思われ、ユウは完全に石川裕也の立ち位置を確保して見せていた。
それは秋の体育祭でもいかんなく発揮された。
ユウは事実上のクラスの中の実行委員長的なポジションを確保、クラスを切り回すことでクラスのリーダーとしての立場を着実に築いていた。

一方でユウは部活においても部長として男子の部活を積極的に引っ張った。
ユウが部長になってから、顧問に対して直訴し、男女の練習試合を中止していた。
そして練習方法を改革していった。
ユウはまず、成果を挙げている他校を調査し、情報を整理した。
その上で、整理した情報を元に部に適した練習方法を取捨選択し取り入れていった。
次に、徹底的な競争原理を取り入れた。
部員間の練習試合の結果を逐一記録し、部員全員をランキング付けした。
ランキング方法は公開し、誰しもが納得できるようにした。
ランキングは毎週更新し、レギュラーはそれに基づいて決定した。
誰かが恣意的にレギュラーを決定するのではなく、レギュラーはランキングで機械的に決定するようにした。
2年からレギュラーを張っていたユウや翔にとっては、自分が簡単にレギュラーを追われるリスクがあったが、それをあえてユウと翔が提案したということが、二人が部員からの信頼を得ることにもなった。
この方法は、メリットデメリットの両面があった。
その結果、部員数は1/3程度減ったが残った部員のモチベーションを大いに上げ、部内が急速に活性化した。

また、各自の意識改革も合わせて推し進めた。
実力主義にした以上天狗は必ず出てくる。
それを避けるために実力に関係なく、他人へアドバイスをしやすい雰囲気作りにも努めた。
人によっては、自分自身は実力はないが、人の実力を評価する目が確かなものが居る事、そして往々にして、人のアドバイスは批判的に感じやすい事を知っていたからだ。
だからこそ各自がそれを真摯に受け止めるよう、繰り返し部員に周知した。
その上でレギュラークラスの実力のある者に対しては、積極的に指導者として役割も果たすように求めた。
ユウ自身も後輩から指導を頼まれれば、何時まででも付き合った。
ユウは、人それぞれが持つ性質を的確に見抜き、たとえ実力がなくても評価の確かな者の意見は積極的に受け入れるように努力した。

しかもユウの行動は学校内にとどまらなかった。
積極的に他校に出向き、人脈を作った。
その結果、他校との交流が劇的に増え、練習試合を数多く行うとともに、技術交流も行い、他校の良いところをどんどん取り入れていった。
正直、これ以上無い位理想的に回ったといってよいだろう。

その一方で女子部との仲は険悪になっていた。
男子部から分離した卓球部員が同好会を結成した事、そして女子部がその同好会と練習を共にしている事が原因だった。
男子部でユウが持ち上げた構想に賛同した者達から見たら、同好会を結成した元男子部員や、その同好会と歩調を合わせる女子部に対して好印象などあるはずも無い。
ユウとしては女子部にも合流して欲しかったが一度崩れた関係を修復するには双方とも頑なであり、ユウの卒業後も改善されることは無かった。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


「ねぇ、美保、部活に復帰してくれないかな?」
詩織はベット上で裕也におねだりをしていた。
もちろん、2人とも全裸であり、事が終わって上気した状態であった。
「ごめん、それは出来ないよ。」
裕也は詩織に気まずい表情をしながらも答えた。
裕也的に詩織の頼みは答えたいと思わないではない。
しかし美保の身体での実力は確認済みで部活の中でも下から数えたほうが早い、その上、リーダーシップもトラウマの所為もありとても発揮できる環境ではない女子部では復帰しても役に立たない事を知っているからこその答えだった。
「そう・・・・」
残念そうにする詩織に相談なら乗ると裕也が答えると、表情を一変させ裕也に甘えるように抱きついた。
裕也は抱きついた詩織を赤子をあやす様に抱きしめて頭を撫でてやった。
裕也個人としては今のユウに干渉する気は無かった。
自分の立ち居地を確保した今のユウに対して美保である自分が裕也であることを主張してもどうにもならないことを自覚していたからだ。
裕也自身は成績面を持って入れ替わりの証明が出来ないものかとも考えていたのだ。
しかし出た結果を見ると、全体に上位をキープするユウ、元々の得意分野である理系の成績に美保の記憶力から底上げされた裕也の成績。
正直入れ替わる前の特色を引き継いでいるとは言いがたかった。
特に裕也は理系と文系の差が縮まってしまった事もあり証明になるとは言えなくなってしまったから。
ならばこそ、裕也は元に戻るための情報、正確には入れ替わりに関する情報の収集の時間をこれ以上減らしたくなかった。闇雲に情報をあさっている現状では時間はいくらあっても足らない。
取り敢えずの目標時期は来年の2月、おそらくユウならば3年の選択では文系進学クラスを選択する。裕也自身は理系なのでそれまでに戻れなければ好きでもない文系中心の勉強をする羽目になる。
それを避けたいという意味があっての目標だった。
とは言いながら裕也自身、入れ替わってから既に4ヶ月を過ぎていながらなんら手がかりを見出せていない現状から、正直なところ2年在学中の復帰は難しいだろうとも思っている。
だからこそ、時間は貴重だった。
流されたとはいえ肉体関係を持った詩織を冷たく突き放す事も出来ず、かといって美保として生きていくつもりが無い裕也は詩織を懐ふかく受け入れる事も出来ない。
そんな関係を続けながらも裕也は諦めず情報を探し続けていた。

しかし、裕也の努力、焦りをあざ笑うかのように二学期の終わりになっても手がかり一つ見つかっていなかった。

ユウは体育祭の後に開催された文化祭でも活躍し、名実共にクラスのリーダーとなり、時期が早ければ生徒会長になっていたかもしれないという噂さえあった。
そんな事もあり、クラスの女生徒達のユウに対するアプローチが激しくなっていた。
アプローチを受けるユウの方は裕也の事を気にしているのだが、裕也はユウに対しては『我関せず』の立場を貫き、視線を向けることも一度としてなかった。
ユウとしては美保に妬いて欲しいのがありありだが、美保はユウに興味が無いというのがクラスメート男女共通の認識だった。
なればこそ、美保が、正確には美保である裕也がだが、ユウに興味を持つ前にユウを落とす、それがユウに惚れている女生徒達共通の認識となっていた。
実際、ユウは裕也に結構、誘いを掛けていたのだ。
期末テスト期間中はテスト勉強の誘い、連休前に遊びに行く誘い、クリスマスイブにも勿論声を掛けていたが振られ続けている。
そして、二学期の終わりには初詣の誘いも掛けたが見事に振られていた。

逆にユウが裕也に対してアプローチを掛けるのをヤキモキして見ていた人物がいる。
誰あろう、詩織だった。
詩織としては自分と美保とは恋仲だという認識でいる。
その美保にユウがアプローチを掛けているのだ。
詩織の眼から見る限りユウは独断先行するキライはあるし、個人的には好きなタイプではないが、一般的な評価では『いい男』に見える。
今はユウを跳ね除けている美保だがなんかのきっかけで受け入れてもおかしくは無い。
まして自分と美保は同性だ。
恋人同士という関係は異性間で成されるほうが自然という事は詩織自身も感じてはいる。
しかし、詩織には今の美保を諦めるという選択肢は無かった。
美保から別れを告げられない限りは今の関係を絶つつもりは無く、卒業しても共に歩みたいと考えていた。
だから詩織は可能な限り美保の近くにいる事を望み、そのように実行していた。
期末の勉強を互いの家に泊まりあいながらし、イブにも食事に招待して男どもを蹴散らしていたのだ。
後から考えればどちらも赤面モノであろうが暴走していたとはいえ詩織は本気だった。
詩織は本気で美保と生涯を共にすることを考えていた。
その為に志望も今の美保が選ぶだろう理系へと切り替えた。勿論、以前美保に観察眼を褒められた事があってのことだ。
そんな詩織も大晦日から三が日に掛けては両親の実家へ顔を出さずにはいられず泣く泣く、美保との初詣を諦めたという経緯があった。


。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


そして、詩織が知れば八つ当たりは確実な偶然。
元旦、裕也はユウと出会っていた。
あの、裕也が美保になってしまったあの場所で、二人きりで。
「美保。」
「よぉ、久しぶりだね、石川君。」
「うん、久しぶりだね、香川さん。
残念、振袖じゃないんだ。」
裕也はユウの台詞を聞くと憮然として答えた。
「美保の母さんと同じようなこと言うなよ。
誰が振袖なんて着るもんか。
石川君、忘れてっかも知れないけど俺の自意識、今でも石川裕也のままなんだぜ。
女らしい服装なんて学校の制服だけで十分。」
「それで革ジャン着てるの?」
「その通り。」
裕也はユウの質問に見事な胸を張って答えた。
「まぁどんな格好していようと香川さんの自由だけどさ。
そうだ、興味本位なんで答えたくなければ答えなくても良いけど・・・もし、今香川さんが僕と入れ替わったらどうする?」
ユウは言い難そうにしながらもはっきりと裕也に問いかける。
一方問いかけられた裕也は迷うことなく答えた。
「新学期が始まると同時に休学届けだして、4月からの復学手続きをして2年生をもう一度やるな。」
「なんで?」
「俺に取っちゃ元に戻るって事だし、2学期の成績は俺のもんじゃないから無かった事にしたいからな。
でも一番大事なのは一つ年食っちまうとはいえ2年生の夏休みを自分の身体で過ごせる事なんだ。」
「自分の?」
「ああ、俺の記憶じゃ一年の時から両親口説いてさ、2年の夏休みはやりたい事して良いって許可を取り付けたんだよ、それも今までに貯めたお金全部つぎ込んで。。
その代り3年の夏は勉強漬けの約束もしたけど。」
「で、何をするつもりだったんだよ。
香川さんの方がお嬢様なんだから自由に使えるお金は多いんじゃないのか?」
「さぁな、そのへんは知らん。
別段、金使うこともなかったからなぁ。
せいぜい私服を新調した事くらいか。
女の子した服しかなかったからな。
ただ、金が使えてもあの両親がレースカートやポケバイレースさせてくれるとは思えんからなぁ。」
「それが2年の夏休みにやりたかった事?」
「ああ、その通り。楽しみにしていたんだけどね。」
「成人してからやれば?」
「まぁ、それも選択肢だけどさ、自分に向いてるかどうかチャレンジしてみたかったんだよ。
駄目なら諦めるし、ってね。
だから高校生のうちに試したかったのさ。
それに美保の両親ってさ、俺が美保のまま成人したら傷の出来そうな事させないで、結婚相手決めてきそうだからなぁ、見合いもすっ飛ばして。」
「そうなんだ。
それじゃ3年になって僕と入れ替わったらどうする?」
「そうだな、夏休み前だったらそのまま夏休みに2年で出来なかった代わりにチャレンジして浪人するさ。
夏過ぎてたら、今の場合と同様、休学して復学、浪人コースかな?
俺の中で決着つけなきゃ先には進めないからな。
もし、秋に入れ替わっていたらここまで必死になっていたかはわかんないけどな。」
「そう・・・・」
「ああ、それじゃあな、石川君。」
裕也はそういうと背中越しに手を上げてその場を去っていった。
そして、それがユウが香川美保の姿を見た最後だった。



# if版6話の公開です。
# 更新が遅い上にボリュームが従来の半分程度。
# if版もあと2話の予定。
# 当初の予定では今回のラストシーンは2年ではなく3年のときの予定だったんですが。
#
# それでは、次話にて。
# ダークサイド
#

2009/1/8

IF三話 〜 第3話 裕也の道、ユウの道 〜
IF四話 〜 第4話 悪夢 〜
IF五話 〜 第5話 詩織 〜
IF六話 〜 第6話 夏休みの価値 〜
IF七話 〜 第7話 美保のいない世界 〜
IF八話 〜 第8話 The Blank of 4-Years 〜
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