IF三話 〜 第3話 裕也の道、ユウの道 〜
IF四話 〜 第4話 悪夢 〜
IF五話 〜 第5話 詩織 〜
IF六話 〜 第6話 夏休みの価値 〜
IF七話 〜 第7話 美保のいない世界 〜
IF八話 〜 第8話 The Blank of 4-Years 〜

これは、ダークサイドさんが執筆した「記憶の中の僕」の「IF五話」です。

IF五話

〜 第5話 詩織 〜


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新学期、裕也は元に戻ることなくこの日を迎えていた。
久しぶり、二度目の女子の制服に袖を通していた裕也は鏡に映る美保の姿を見て溜息をついた。
鏡に映るのはいまだ記憶に残る美保の姿・・・ではなかった。
「ブラ、忘れた。」
裕也は溜息をつくと、着替えなおし、鞄を片手に一階へと降りていった。
「美保、おはよう。」
「おはよ。」
「美保、ご飯は?」
「いらない。」
なんとなく美保の家族に制服姿が見られるのを恥ずかしく感じた裕也は朝食を取ることなく自転車に乗り込むと公園へと向った。
公園に着いた裕也は、『あの日のファーストキスの場所』へと立つとノートを取り出して火をつけた。
裕也はノートが燃え尽きるまで眺めていると自転車に乗り、学校へと向った。

何時ものではなく、美保の駐輪スペースに自転車を止めた裕也は教室へと急いだ。
「ふぅ」
裕也は教室の前で一息ついていた。
夏休み前には裕也として会っていたクラスメイトと美保として会う。
それは必要以上に裕也に対して緊張を強いていた。ちょうど入れ替わった日、美保として美保の家に帰ったとき、それに匹敵する緊張感がよみがえり、教室に入る足取りも重かった。
しかし、裕也の心配は杞憂でしかなかった。
詩織のように仲の良い友達であればともかく、内面がいくら変わろうと身体は美保である。
筆跡が変化したように普段の何気ない動作も身体に準じている状態で今の裕也が美保でない事を看破するのは至難の技と言えるのだから。
放送による朝礼が終わると始業日の今日はロングホームルームだけだった。

「さて、最後に宿題を出していってね。」
各自、次々と宿題を出して教室を出て行く中、裕也だけは席を動こうとしなかった。
「これで全部かな?」
「先生、自分は宿題をやっていませんので提出できません。
それでは失礼します。」
皆が出た後、裕也はそういうと教室を出て行こうとした。
「か、香川さん、宿題やっていないって言うのは・・・」
「やってません。
全く手もつけていませんので提出はしません。
改めてやるつもりも無いので必要なら減点しておいてください。」
裕也はそういうと担任の引き止める声を無視して職員室へと向った。


二学期始業日最大のイベントとして部活の引継ぎがある。
裕也と美保の学校では、三年生は今日この日を持って一線から退き、後輩に後を託すのである。
これはユウの所属する卓球部も例外ではない。
但し、引継ぎ方法に関しては部ごとに顧問の性格が出る。
卓球部の場合は基本は立候補、それに対して不信任が成立しない限りはその中から選ばれる。
これは男子も女子も同じだった。
立候補者がいない場合、推薦。複数の推薦があった場合は挙手にて勝ちを決める。
ちなみに推薦されるものは部に所属していれば良く、一年でも構わないどころか休部中の者であっても構わない。
これは昔、休部して出てこなかった部員を部長にして引きずり出した事に由来しているらしい。

もし、美保が美保としてこの場にいれば立候補してすんなりと決まったはずだったろう。
今の2年生女子の中では、1、2の実力を持っている上、美保にはリーダーシップがあった。
美保は男子部から見た女子部部長候補筆頭だった。
一方、女子から見た男子部部長の最有力候補は佐々木 翔だった。
今の2年生の中では、1、2の実力を持っている上、美保ほどではなかったが十分なリーダーシップがあった。
翔に次ぐ実力があると目されているのが裕也だった。
但し、女子部のメンバーから見ると頼りない、流されやすい、軟弱といった部長に不向きな条件が大量に並べられる事もあり、まず無いだろうと予想されていた。
しかし、実際に選出された部長は両者の予想から大きく外れたものであった。

「あ、佐々木君、男子部の副部長、誰に決まった?」
「なんで部長聞かずにいきなり副部長を聞くかな?」
翔は溜息をつきながら澤田由香里の事を見た。
女子部から見た男子部の部長は翔がガチ本命であり、翔以外の予想は無かったからなのだが、男子部から見た評価は少し違う。
「だって部長は佐々木君でしょ?」
由香里は翔に迫るかのように尋ねた。
(そういえば由香里は佐々木君の事が好きだって言ってたっけ。)
詩織はその様子を見て溜息をつきながら翔の隣に立つユウの事を眺めていた。
詩織としては不思議なのだが最近のユウを見ていると何か惹かれるものがあるのを感じていた。
ちょうど、美保を見ているときの感情のようであり、違うようでもあり、良く判らない感情に支配されていた。
「違うよ、誰だと思う?」
翔は由香里のアプローチにどぎまぎしながらも平静を装って答えた。
「佐々木君じゃないの?」
「俺が副部長。」
「え?佐々木君が副部長!それじゃ誰が部長するのよ!」
由香里が詰め寄るのも無理は無い。
詩織も同じ思いだった。
多分、他の部員がいれば同じ事を言った筈だ。
「こいつだよ。」
翔はユウを指差した。
「えーっ、うそ!」
「本当。
こいつが立候補して、満場一致で決定。」
由香里はユウの事を凝視しながらいかにも遺憾だという雰囲気を崩そうとしない。
「なんでこんなに軟弱男が。」
「うん、女子部の裕也に対する評価ってそんなもんだろうね。」
翔は笑顔でそう言いながら続けた。
「男子部の評価と女子部の評価って結構違うからね、裕也の場合。」
「どういう事?」
「うん、裕也ってさ、年の近い女子がいる時といない時とじゃかなり違うんだよね。
年の近い女子がいると、まぁ、澤田さんの言うようなキャラクタなんだけどさ、男子だけだとちょっと違って、物事ははっきり言うし、かなりの意地っ張り。
女子部員がいるときにガラガラと意見が転がされ流されてるみんなの知っている裕也とは別人だよ。」
「嘘」
「本当だって。
ただ、そんな奴だから副部長で裏方を頼むつもりだっただけどさ、例の夏祭り以来変わってさ、」
翔は詩織の方へ『思い当たる事あるよね』という視線を流して話を続けた。
「女子部がいてもヘタレに見えなくなっているし、大会で良いところまで行ったのが自信になっているのか結構はっきりと自分の意見言うし、これなら部長任せても大丈夫だって意見が一致したんだ。
残念ながらあっちは纏まらなかったみたいだけど。」
「それで石川君が部長なんだ。」
「うん、よろしく頼むね。」
ユウは詩織と由香里に微笑むとそう言った。
「ところで女子部は?
香川さんがいればガチ本命で部長だったろうけど。」
ユウの言葉を聴いて詩織は頭を捻った。
「あれ?
ユウ君、美保の事名前で呼び捨てにしていなかったっけ?」
「いや・・・本人に下の名前で呼ぶなって言われてさ、呼ぶなら苗字を呼べって言われて。」
「そうなんだ。」
「うん。
でさ、香川さんが休部してても推薦して部長に据えて復部させるかと思ってたんだけど。
当たり?」
「うん、実はそれ、狙っていたんだけどさ・・・・あの娘、昨日付けの退部届け、提出して退部しちゃったのよ。
元部長も今日聞いたらしくって、驚いたらしいわ。」
「冗談・・・・だよね。」
「ユウ君、事実なの。
だから推薦で部長は由香里、私が副部長なの。」
「そうか・・・・・」
ユウががっくりと肩を落とすのを見て詩織は寂しさを覚えていた。


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ピロリン
裕也は美保の携帯の着信音がなるのを聞くと取り出して眺めた。
(ユウが部長で翔が副部長。
ま、予想通りだね。)
裕也は詩織からのメールを確認すると携帯を閉じた。
裕也はもはやユウの行動に対して意識を払う気もなく、図書館での調べ物に戻った。
(俺と違って美保は誰の前でも物怖じしないものなぁ。)
裕也は調べ物の手を止めて入れ替わる前の自分に、記憶の中にいる自分に思いをはせていた。
(男子しかいない時と女子部との合同の時、それぞれの自分を思い返すと他人事なら笑い話なんだけど。)
裕也が同じ年頃の女子がいると途端に人が変わるのは美保と知り合うよりも以前にうけたあるトラウマが原因だった。
他人の、今の年頃の者からすれば取るに足らない話といえないことも無い。
しかし、子供の頃に受けたトラウマは裕也の心にしっかりと根付いていた。
原因は天然な母親だった。
当時の裕也は線が細く、見た目女の子で通る顔立ちをしていたのだ。
そこで女の子の服を着せてみたところ、想像以上に似合って見えたのだ。
その上、当時の裕也は子供だった事もあり男の子と女の子の区別が付いていなかったのだ。
その為、女の子の服を着せても嫌がらなかったこともあり、裕也の母親は調子に乗って髪まで伸ばさせたものだから、お転婆な、大人しくしていれば可愛い美幼女の出来上がりとなっていた。
本人も近所の子も裕也の性別を気にしないまま、というより女の子だと信じてい遊んでいた。
「ユウちゃんがお母さん役ね。私がお父さん役するから。」
「ずるい、私もお父さん役やりたい。」
「あのさぁ、僕がお父さん役じゃ駄目?」
「だめぇ。ユウちゃんは可愛いんだからお母さん役するのぉ。」
「ひらひらのスカート履いたお父さんなんていないもん。」
「僕もお父さんやりたいよぉ。」
裕也はそんな日々がずっと続いていくと思っていた。もちろん、子供らしい考えではあったが少しづつ変化していながらも続いて行っただろう、本来であれば。
しかし、その続くべき日は断ち切られる。裕也が、ユウちゃんが本当は男の子だという事が女の子たちにバレるという形で。
まぁ、ばれたと言う表現が正しいかは疑問ではある。
裕也にも裕也の母にも隠していたという意識は微塵も無かったのだから。
だからこそ、当時の裕也にはなぜ自分が責められているのか、理由そのものが分からなかった。
分かった事は自分が彼女たちに対して何かしらの裏切りをしてしまった事、そして自分には何が悪かったのかが分からない事だった。
「ユウちゃんの嘘つき!」
当時、裕也と大の仲良しだった女の子の一人に言われた言葉だ。
その子は裕也にそう一言だけいって、背を向けてそれっきり会わなくなってしまった。
他の子には散々なじられ、虐められはしたが、時間と共に男の子として改めて交友を結ぶ事が出来た。
でも、その女の子とはそれっきり、会うことも無く苦い思い出として裕也の心に楔を打ち込んでいた。
裕也は大好きだった女の子に謝りたくて、一緒に遊んでいたところに何度となく通った。
しかし、一度も会うことも無く、3ヶ月が過ぎていた。
子供にとっての3ヶ月は長い。それだけ、謝るためだけに通い続けた裕也は、大好きだったあの子にはもう二度と会えないんだと感じ、涙を流していた。
そして、裕也は変わった。
年の近い女の子と居ると一歩下がったところに居て自分の意見は殆ど言わなくなった。詰め寄られると考えがまとまらなくなった。
(それでも少しはマシになったんだよな)


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「あれ、美保今帰り?」
裕也が図書館から変える時、申し送りなどをしていて遅くなった新部長たちと校門でばったりと会っていた。
「うん、図書室で調べ物していたからね。詩織たちは部活の帰り?」
「そうよ。で、これからちょっと寄り道。美保も来ない?」
「いや、遠慮しておくよ。
誰かさんと喧嘩したくないし。」
裕也はチラッとユウの方を見てそういうと踵を返し後ろ手に手を振ると校門から自転車に乗ると走り去っていった。
「ユウ君、一体美保に何をしたの?
あそこまで露骨に嫌がられるのって普通じゃいと思うんだけど。」
「別に何も・・・・・」
「本当か?迫って振られたんじないのか?」
「そんな事していない。
お前たち俺をどう見ている?」
「むっつりスケベ」
むすっとするユウをみて翔は笑いながら続けた。
「冗談だよ、冗談。
お前が、そんなこと出来ないってのは俺たちが良く知ってるさ。
まぁ、最近のお前なら分からないけどな。」
ユウは不本意そうな顔をしながらも言い返すことは出来ず、黙っているしかなかった。
ユウは入れ替わってから、どんどん裕也に馴染んでいた。
今まで裕也の居た空間を自分の空間として、ユウの色に染め上げていた。
裕也自身もその事には気づいていたが、それに対して何らかの行動を起こすということは無かった。
今日の校門での出来事のように、自分には関係ないという態度を、少なくとも表面上は、貫き続けていた。

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裕也は美保の部屋に入ると制服を脱ぎ散らかし、下着姿になるとベットの中へと潜り込んだ。
最近の裕也は美保としている事にストレスを感じると、自慰行為をして発散するようになっていた。
授業中や家の中で美保として期待される事、美保として扱われることに対するストレスが大きくなる事を感じながらもそれに対する明確な対処の手立てが無い、それが一層裕也のストレスを大きなものにしていた。

入れ替わりを知らない先生達は美保の身体である裕也を当然優秀な生徒として取り扱うのだが、たびたび、先生の期待を裏切る対応をせざる得ない。
それに対する先生達の態度も裕也にストレスを溜めさせる原因となっていた。
今の裕也にとって美保の帰る場所としての美保の立場に関してはどうでもよかったが、元に戻るための調査には美保をある程度演じる必要があったから尚更である。
一方でユウは、確実に頭角をあらわしていった。
部活において既にユウは部長としてリーダーシップを発揮していたが、それはクラスにおいても発揮され始めていた。
明らかに夏休み前の裕也とは違い、自信に満ちた態度でクラスを引っ張りつつあり、それが裕也には嫉ましかった。それはたとえ自分が裕也のままであったとしたら出来なかった事だから。


裕也は、無意識に胸をギュッと押さえた。
(あ・・・)
最近ではおなじみになった快感を感じた。
今度は、意識して乳房をつかんだ。
「んっ・・」
また、身体に快感が走しる。
(気持ちいい・・・)
裕也は同じ行為を何度も繰り返した。
やがて、右手を股間に回した。
何時ものように、初めはそっと触れ、快感が高まるにつれて、徐々に力を入れていく。
(だめだ、止められない・・・、気持ちいい・・・)

股間はすっかり濡れている。
裕也は、割れ目に沿って指を動かし続けた。
「んふっ・・・んんっ・・・」
固くなったクリトリスに指が触れるたび、快感に声がもれた。
裕也は、右手の指を繊細に動かして股間を刺激し、左手は手のひらで大胆に乳房を刺激した。
刺激するたびに異なる快感が身体中を駆け巡った。
目の前に自分の身体を奪い取ったユウがいて、無理やり犯されることを想像し、自らを愛撫する手に荒々しさを含み始める。
(お、男の頃は美保の事を抱くことを想像してシテたのに。
今は・・・・)
いくら同い年の頃の女子に弱いといっても裕也もれっきとした男の子。
もちろん、男として、時々オナニーをしていた。
高校1年の時、翔に言葉に、だまされたと思ってやってみたのが初めてだった。
それ以来、裕也は家の中のひとりになれる場所で時々していた。
最近は美保の事を考えながらすることが多かった。
想像の中で愛しく、恋人として抱く事を想像したり、無理やり犯してモノにすることを想像したり、年頃の男の子としては当然の事だったろう。
しかし、そんな裕也が今は美保としてオナニーをしている。
そんな倒錯したこと考えると、切なくなり、ますます、快感が高まった。
その結果、相手として出てくるのは親友の翔や、裕也の身体を奪った美保、ユウだったのは必然だったろう。
男であれば、快感が爆発的に高まり射精で終了する。
しかし、美保の身体では一回イッタくらいでは終わらない。

一旦イッタにもかかわらず、両手で乳房と股間を弄り始めた。
自分で自分を焦らすことが快感に繋がった。
気持ちをもう一度高ぶらせてから、一番敏感なところを直接刺激し始める。
その瞬間の、歯をかみ締めて眉間にしわを寄せた美保の卑猥な表情を想像すると、日ごろの美保の知的な表情とのギャップに脳が刺激され、一層気持ちが高ぶった。
気持ちが高ぶれば、もう身体は刺激を受ければ受けるだけ快感を発信する。
快感の波が繰り返し訪れ、徐々に大きくなり、最後は快感の津波となって裕也の身体を駆けめぐる。
(いきそう)
そう感じた裕也はクリトリスを潰す様に摘むと快感がピークに達し、内腿に引きつるように力が加わるのを感じ、身体を硬直させた。(イッタ)
裕也は女としての快感を覚えてしまっていた。
(その快感のピークは、射精の瞬間の方が高かったような気もすめけど、女のイク事の方が後を引くよなぁ)
裕也にとって男としての射精感の方が快感としては上だったが、女の方が快感の高い状態をキープする時間は圧倒的に長かった。
快感の波が引くのを待って裕也は後片付けを始めた。
美保の身体は感じやすいのか、自慰行為をした後のシーツはびしょびしょでマメに変えざる得なかったのだ。

身体中で汗をかいていた。
股間はびっしょり濡れていた。
裕也は、ティッシュを手に取り、その敏感なところを拭く為にパジャマのズボンをひざまで下ろし、パンティーを太ももまでおろした。
鏡を見ながら綺麗にふき取る。
鏡に映るその姿も、見下ろした時に見える、美保の白いきれいな脚は、裕也にとってとてもエロティックだった。
裕也はまた、胸の鼓動が大きくなったが、流石にもう一度オナニーをする気にはならなかった。

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裕也が部活を止めた事で、裕也と、正確には美保と詩織の距離は徐々にではあるが開いていた。
詩織は時折、たいした事でなくてもメールを飛ばしてくる。
その一方で裕也はそれに対する返信をあまりしないのだ。
これは裕也自身に携帯でメールをする習慣が薄い事に起因していた。
『メールは連絡が付かないときの補助アイテム』という意識が裕也にはあり、基本的に通話で対応していたからなのだが。

もちろん、詩織に入れ替わりのことは話していない。
しかし、詩織は無意識にユウが美保である事を感じているのではないか、裕也はそう考えていた。
ユウに対する詩織の態度が裕也が『裕也』だった頃と比べて明らかに違っていた。その態度はむしろ、詩織が美保に対して取っていた態度に近い。
しかし、問題なのは美保は女でユウは男と言うことだ。
このまま行けば詩織はユウに告白する事は簡単に予想できた。
(問題はそれをユウが受け入れるかどうかだが・・・・関係ない。)
裕也はそう結論付けている。
裕也はユウが誰と付き合っていたとしても元に戻ったときにはその関係を解消するつもりだったから。
しかし、裕也のその考えは甘かった。

「一緒に試験勉強をしよう!」
中間試験の発表当日、詩織はそう言って裕也に迫ってきた。
正直、断るつもりの裕也だったのだが・・・・結局、詩織に押し切られる形で了承する事になってしまった。
それも土曜からの泊り込みで。
いくら今は同性とは言え、裕也の意識は男のままである。
正直、詩織のあられもない姿を見て我慢する自身が裕也には無かった。
まして、今の裕也は美保の身体で楽しむ事に関して禁忌を感じては居ないのだから。
何とか泊り込みは避けようとする裕也に、させようとする詩織。
挙句に詩織は土曜日が休みなのをいいことに金曜からと攻められ、妥協する形で土曜からになってしまったのだ。
裕也としては土曜日が来るのが憂鬱で仕方が無いが約束した以上は守るしかないのだが。



「お邪魔します。」
裕也は土曜日の朝、お泊りセットと勉強道具を持って詩織の家にと来ていた。
もちろん、日課の公園参りの後でである。
ユウの衝撃の告白の後も裕也は公園参りを殆ど欠かすことなく続けていた。
実は一部で、噂になっていたらしいのだが裕也自身はそれを知ることは無かった。
物憂げな美少女が毎日の様に公園に来て寂しそうな表情をして帰っていくと。
噂では恋人に振られた、亡くなった恋人の思い出の場所だとかいろいろな事が囁かれていた。
実は裕也自身もその噂は聞いているのだが、自分の事とは気づかず、一時期はその噂の美少女を一目見たくて周りに注意を払っていたりもしたのだ。
「いらっしゃい、ほら入って。」
裕也は詩織に招かれるままに家にと上がった。
出来るだけ周りを見たりしないように意識しながら案内されるまま詩織の部屋へと向かっていた。
美保と詩織の関係からすれば何度と無く部屋へお邪魔していてることは容易に想像できる。
なれば周りを珍しそうに見渡すのはおかしい筈だ、というのが裕也の考えだった。
しかし、そちらに集中しすぎて他が疎かになっていたところを詩織にと突っ込まれる事になる。
「今日はずいぶんと大人しいわね、美保。」
「そ、そう?
試験勉強するのが好きな人って居ないんじゃない?」
「あれ?
美保って結構楽しそうにやっていた気もするんだけど。」
「き、気のせいよ、それ。」
「そうかなぁ。」


詩織と裕也は向き合うように詩織の部屋のテーブルでそれぞれに試験勉強をしていた。
向かいでクッションの上にちょこんと女の子座りをして、ちょっと首を傾げながらペンを走らせているその姿は、本当に愛らしくて、裕也は詩織を抱きしめたくなる。
「ふう〜っ。」
詩織は一息ついて、ペンを置いた。
「詩織、集中してたね。」
「うん、取りあえずはこんな感じかなぁ。でも、ノートの取り方変わったよね。」
「以前のほうが良かった?」
「うーん、どっちもどっちかな?でも前の方が見やすかったかも。」
「そう。」
裕也はなんとなく誤魔化しながら今の自分に詩織の美保像を重ね合わせようとしていた。
「ねえ、ユウくんとは連絡取ってるの?」
「石川君?
全然してないわよ、だって教室で顔を合わせているだけで十分だもの。」

裕也と詩織は、ベッドに並んで腰かけ、用意しておいたオレンジジュースを飲みながら話していた。
詩織は日ごろから、女の子らしい服装を好んで着ており今日も、フリルのついた白いフレンチ袖のブラウスを着て、すそに刺繍があしらわれたピンクのミニスカートをはいていた。
詩織は同性である裕也に気を許しているのか、ベッドに座っていてスカートが少し捲れても気にせずに太ももを露にしていた。
裕也はとなりに座っている詩織の脚を、どきどきしながら眺めていた。
美保になって数ヶ月が過ぎ、女の裸そのものにも馴れてきたとは言え、それはあくまで美保の、自分の身体でのことだ。
詩織の物となれば話は別であり、正直興奮しないといえば嘘になる。
ただ、裕也としては男としてのものがそそり立つ感覚を期待しながらも肉体的には女である為、胸が張り、股間が湿ると言う女独特の感覚である事に意識が少し醒める。
仮に男の身体であったら間違いなく詩織を押し倒していたはずだ。
「あ、美保。何見てるのお?」
詩織はいたずらっこのような目つきで裕也を見た。
「えっ?」
裕也がドギマギしていると、詩織はふいに自分でスカート捲りあげた。
(あっ!)
詩織のパンティーが見えた。
それは薄いピンク色で白い小さなリボンが付いていた。
「これ、かわいいでしょ。スカートの色に合わせてみたんだけど。」
裕也は詩織の突然の行動に、心臓の鼓動が急に激しく、頭の中が真っ白になりかけていた。
「う、うん。か、かわいいけど・・・、やめなよ・・。」
裕也は、詩織に背を向けて、オレンジジュースを一口飲んだ。
「あー、美保、何照れてるの?女の子同士だもん、こんなの当たり前でしょ。」
(当たり前?)
「別に照れてないけど・・・。」
裕也は詩織のペースに完全に動揺していた。
一度だけだが部活の更衣室では、詩織たち女子部員の下着姿は目に入っているし、裕也自身の下着姿も詩織たちには見られている。
しかし、あの時とは状況が違った。
裕也自身、美保の振りはしているがそれはあくまでも戻るために必要な事だからであり、以前見たいな美保の居場所を守るという意識ではない。
その上、男として詩織を意識している状態で、詩織の部屋で二人きりでいる今ではシチュエーションが違いすぎる。

「ねえ、美保、あたしのこと嫌い?」
詩織が急に真剣なまなざしで裕也に問いかけた。
「突然どうしたのよ。」
詩織は少し戸惑ったように、視線を泳がすと決心したように裕也の目をまっすぐに見ると口を開いた。
「私ね、ずっと美保に憧れていたの。
ユウ君に興味を持ったのも美保が気にしていたから。
でも、あの日から2人とも変わってしまった。
最近ね、ユウの事が美保に見えるときがあるの。ううん、あのお祭りの後からってのが正確かな?」
「それで?」
「正直に言うわね。
私は今の美保が好き。
憧れていた美保じゃなくなった今美保が好き。」
「石川君のことは?」
詩織は一瞬嫌そうな顔をすると、吐き出すように言った。
「正直ね、彼に憧れたの。
練習の時、試合の時の感じが美保そっくりだったから。
美保が男の子だったからこんな感じになるだろうなぁって。
でもね、それは間違いだったの。
美保は、私の知っている美保はあんな独善的なことしない。」
「詩織。」
裕也は興奮した詩織を宥めるように声を掛けた。
「ごめん、美保。
ユウ君ね、部長になって変わったの。
それまでも色々改革案とか出していたみたいだけど、ちゃんと相談してやっていたし、女子部との調整もしていた。
でも、部長になってから変わったの。
やっている事は間違ってない気がする。
でも、でもね、正しいからって全部が全部受け入れられるものじゃないよね。
部活って勝つ為だけにしているわけじゃないよね。」
「詩織・・・・」
「ごめんね。
愚痴になっちゃった。
なんかね、今の美保と居ると私おかしくなるの。
美保、態度は冷たいんだけど、そばに居て暖かいの。
なんか昔のユウ君みたい。
オタオタしているんだけど、抑えるところは抑えていて、回りに気を使って。
頼りなさそうに見えるのにそばに居ると安心できる。
あれ、言葉にすると全然違うのに、おかしいなぁ。」
涙を流しながら中を見てそんな事を行っている詩織をみて裕也はそっと胸に抱きかかえると諭すように言った。
「気にしないで。
詩織は詩織の目と感を信じなさい。
ちゃんと色々見えてるから。
本当にいい観察眼しているわ、理系に進むといいかもしれないわね。」
「美保、胸貸してくれる?」
「うん。」

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

目を覚ました裕也は凄く後悔していた。
詩織を慰める、そこまでは良かった。
色々と葛藤があったのだろう詩織を抱きしめて泣かせてやる事で少しでも発散できればと思った。
いまだ男としての意識の強い裕也にとって、詩織と2人きりでベットの上というシチュエーションに、考えなかったわけではない。
もちろん、事に及ぶつもりは無かった・・・・・我慢できると思っていた。
しかし、現実はそう甘くなかった。
縋る様に望んできた詩織を突き放す事が出来なかった裕也は、今、詩織と詩織のベッドの上に居る、2人とも全裸で。
裕也は、昨夜の詩織との睦事を思い出していた。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


裕也の胸でひとしきり泣いた詩織がふと顔を上げ、潤んだ瞳で裕也を見つめてきた時、あの時かわせなかった裕也の未熟さを攻めるのは酷だろう。
詩織自身、元の美保にもそういう思いがあったのだろう。
そして、年の近い女子の押しに弱い裕也。
結果は初めから決まっていたのかもしれない。
「ねえ、美保、キスしていい?」
詩織の方から裕也に求めてきた。
裕也は驚いた。
(詩織はどういう感情で僕にキスを求めてきたのだろうか?)
「うん。」
裕也はそう考えながらも無意識に返事を返していた。
裕也自身、冷静なつもりで、実際は結構パニクッていたのだろう。
軽いキスを受けたつもりが口の中を詩織に蹂躙される裕也。
「美保・・・」
「詩織・・・」
一旦口を離した二人はお互いの名前を呼ぶと再びゆっくりと唇を重ねた。
そして、二人は抱きしめあい、その勢いでベッドに一緒に倒れ込んだ。
裕也は男の欲望に従って詩織の胸のふくらみに手を出していた。
そして詩織の髪のほのかな香りに、状況に酔い、理性が断ち切られ本能が強く出てくる。
「あ、ダメ・・」
詩織は小さな声で呟いたが、身体は抵抗しなかった。
むしろ、積極的に裕也の行為に協力していた。
裕也はそのまま、ブラジャー越しに左右の乳房を愛撫した。
「ん・・・ん・・・」
詩織は呼吸をしながら声を漏らしている。
すると、今度は詩織が裕也の胸に手を伸ばしてきた。
「んぁっ。」
詩織の右手が裕也の左の乳房に触れたとき、裕也は上半身に自分でするのとは違った快感が走るのを感じていた。
裕也は自分の乳房があまりにも敏感になっていることに驚いた。
互いの乳房を愛撫し続けるうち、裕也は自身の下半身が反応している事を感じていた。
裕也は自分の右手を、ピンクのミニスカートから覗く詩織のきれいな太腿に持っていった。
そして、左足の内腿に触れつつ、少しずつスカートを捲った。
「んぁ・・・」
詩織は腰を上げると裕也がスカートを脱がせるのに積極的に協力した。
裕也は詩織のスカートを脱がすとショーツの中に手を入れ、詩織の女に触れた。
「あ・・・」
詩織が小さく声を上げた。
裕也は詩織の反応にますます興奮し、さらに刺激した。
(こんなに濡れている・・・。)
裕也は詩織が感じていることを確認すると、自分のそこも同じように濡れてくるのを感じた。
(触りたい・・。)
裕也は、自分の濡れている場所も確認したくなってしまった。
詩織も裕也の女に触れたくなっていたのだろう、裕也のショートパンツを脱がしにかかっていた。
裕也はそれに答えるように動きを調整した。
裕也と詩織は下半身がショーツだけになると下半身を密着させた。
詩織の脚と裕也の脚が触れ合った。
詩織の見たままの滑らかな素肌の感触が、裕也の脚に伝わり、しびれるような快感が走る。
裕也達は、それだけでは満足できず、全てを脱ぎ去り、抱き合いながら脚を絡ませ、その素肌と素肌が触れ合う快感に浸った。
互いに相手の股間を愛撫した。
詩織は時々目を開け、快感に満ちた表情で裕也を見つめた。
裕也も同じ表情をしていた。
二人は快感がピークに達するまで愛撫し続け、意識を飛ばした。


裕也は昨日の詩織との行為を思い出しただけで股間が濡れてくるのを感じていた。
女としての快感を覚える前ならともかく、女としての快感を身に刻み込んだ美保の身体は詩織の愛撫に面白いように反応していた。
(自分でするより、してもらう方が感じるもんなんだ)

「美保・・・・ごめんね。」
「詩織。」
「でも、私は美保が好き。
女同士でおかしいかも知れないけど、私は今の美保が好き。」
裕也は詩織にかけてやる言葉が見つからず、ただ、ただ抱きしめるだけだった。

。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

白い部屋の白いベッドの真っ白なシーツの上で、裕也は詩織と愛し合っている。
裕也は、最大限に勃起した自分のペニスを、詩織の股間に近づけた。
詩織は目を閉じて裕也に身を任せている。
裕也はペニスを詩織の股間にそっと触れさせた。
そこは、ペニスを受け入れる準備がすっかりできていた。
それを確認すると、そのままペニスをゆっくりと挿入した。
詩織はペニスの強引な侵入に、眉間にしわをよせ、下唇を軽く噛んだ。
裕也は、詩織の表情を気にせず、ゆっくり挿入を続けた。
ついに一番奥まで到達すると、裕也はペニスを締め付けるその快感に浸った。
同時に、詩織は口を開き、「あ・・」と声を漏らした。
進入してきたペニスが詩織の中を刺激し、詩織にはそれがいつしか快感となっていた。
裕也は徐々に動きを激しくしていった。
詩織はその都度、快感に表情を歪め、声を漏らした。

ついに、裕也は射精したはずなのに射精感が無い。
それどころか胎内に流れ込んでくる感覚。

目を開けると、裕也の上に自分自身がいた。
そして鏡に映る自分と詩織。裕也は詩織になっていて裕也の射精をその胎内で受け止めていたのだ。
「えっ!!」

裕也は、「はっ」として、もう一度目を開けた。
いや、目が覚めた。
裕也は、薄暗い明かりの下、いつもの美保のベッドの中にいた。

(夢・・・・)

裕也が股間に手を入れるとそこはすっかり濡れていた。
さっきまで力強くそそり立っていたペニスは、そこにはなかった。
(詩織と関係を持ったからかな?
本当は女同士としてでなく、男として詩織を抱きたかったから・・・・それが夢になって。
で、でも最後のは無いよ、何で自分の精液を胎内で。
もしも、元に戻れなかったらいつかは俺も誰かと結婚して、胎内に精液を受け入れることになるんだろうか。)


そんな思考にふけりながら何時ものように登校準備を始めた。



# if版5話の公開です。
# 遂に2学期スタート。
# 詩織と裕也の関係が進展しました。
# 実は最後まで迷ったのが詩織と裕也との関係。
# なんかユウと詩織のラブ関係を期待されていたみたいで、どうしようかと迷った挙句、百合関係勃発。
# これで詩織嬢の立ち位置も確定。原作では大学生編でしたが本作では次回も高校生編です。
#
# それでは、次話にて。
# ダークサイド

2008/12/23

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IF四話 〜 第4話 悪夢 〜
IF五話 〜 第5話 詩織 〜
IF六話 〜 第6話 夏休みの価値 〜
IF七話 〜 第7話 美保のいない世界 〜
IF八話 〜 第8話 The Blank of 4-Years 〜
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